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第515話 小城の流民

咸陽では連合軍が列尾を捨てたという報が届く。城に秦の旗は立ててあるものの、兵は残っていなく、王翦からは列尾はすぐに趙に奪還されるため、補給は送らなくてよいという伝言があった。
それを聞き、昌平君は自分達が授けた策を捨てて、連合軍は王翦の策で動いていると判断した。
昌文君は列尾を捨てて、なぜ先に進んだのだと怒りと共に焦りを隠せないでいた。ここまでは間違いなく上策であったが、現場の何らかの理由で捨てざるを得なかったのであれば、即座に全軍退却すべきだ、連合軍は今持っている兵糧が尽きる前に鄴を落とさねばならなくなったと力任せに机を叩いた。
昌平君は連合軍の動きを確認する。伝令は楊端和五万が分離し、趙軍九万と交戦に入り、本軍は鄴へ向かわずに吾多という小都市へ攻め入ったと報告する。政はそれを聞き、昌平君にその意図を確認するが、昌平君は首を振り、王翦が何を考えているのかわからないでいた。

前線では吾多と同様のことをしており、信は焦っていた。王翦は流れができつつあると確認するが、信はそこに一刻も早く鄴へ向かうべきであり、山の民はそのために盾となって戦っていると主張すると、王翦は信の目の前に立ちはだかり、睨みつける。
王翦は李牧が最初の位置から邯鄲に戻るには最短でもあと一日かかる、そこから王都圏の軍を統制し、動き出すのに一日、それらが鄴を守りに到着するのに一日、それまでにこちらの仕掛けを済ませておく必要があると語る。
さらにここから鄴までの間にあと七つ城があり、王翦軍、桓騎軍、そして、楽華と玉鳳と飛信隊の合同軍の三軍に分けて西から順に足並みを揃えて落としていく、やることは同じく兵糧を全て奪い民を東へと追いやることだと続ける。

そこに急報が入る。列尾が趙軍の手に落ちたというものであり、太行山脈に沿って南下してきて軍、およそ五万が占拠し、外にまで展開布陣し始めたとのことであった。ついに出口が塞がれたのである。王翦はそれを聞き、楊端和に本軍の動きと足並みを揃えよと伝令を出す。

公孫龍は、山の民と相対していた。山の民は趙軍が攻めなければ動いてはこなかった。公孫龍は山の民は趙軍を足止めしていると考えているだろうが、それは逆であり、兵糧に制限があるのは秦軍で、刻一刻と首が絞まっていると考えていた。そこに山の民が東へ少し陣を動かしているという報告が入る。公孫龍は何も状況は変わらないと距離を保ったままついていった。

王翦の細かい指示に従い三軍が展開し中小都市を落として回ったため、城を追われた難民の群れは増え続ける一方であった。
山旦城を落とした信たちは移動する難民を眺めていた。信は難民を作って落とした城は占拠せず軍は次へ動かすと何をやらされているんだと叫ぶが、羌瘣はイナゴだと呟く。それを聞き、王賁と蒙恬は王翦の真意に辿り着く。

そして、王都圏南部に難民の大行列が出現していたその時ついに李牧が王都邯鄲へ到着した。





羌瘣がイナゴだと言ったことから、鄴に難民を向かわせ、難民に鄴の兵糧を干上がらせるということでしょうか。そうした場合、鄴を占拠しても結局補給が望めない秦連合軍も干上がってしまうでしょう。しかも仕掛けと言っていたからにはやはり難民に兵を紛れ込ませて、鄴を攻めると同時に中から瓦解させるということになりそうですね。
そして、李牧は逆に自ら作り上げた完璧に近い守りの鄴を奪還すべく王翦軍との戦いになるのかと思います。

合併号なので、来週発刊がないのはちょっと寂しいですね…

第514話 愚策の極み

秦連合軍と同時期に趙へ侵攻していた燕軍。戦況を見つめるオルドは次々と燕兵をなぎ倒す司馬尚軍を視界に捉えていた。オルドは燕国境側に大虎が眠っているなら、先に言え李牧と毒づきながら、面白いと前に出ようとする。
しかし、そこに急報が入る。趙の東本軍が東に進み、燕領土に侵攻し、現在貍城を攻撃中というものであった。さらに急報が入り、貍城はすでに陥落し、趙軍はそのまま陽城に攻め込んだため、陽城から援軍要請が来ていた。趙は燕軍の退路を断つ気であった。
オルドはこの策は李牧が予め用意していた戦略であると断定する。しかし、その策は司馬尚軍五千でオルド本軍二万を食い止めるということが前提であり、気に食わぬと怒りを露わにする。オルドは自分の落ち度とし、陽と貍を奪還しに行くぞと号令をかけ、全軍退却する。
それを見た司馬尚は青歌に戻る。

乱城に到着した李牧は燕軍退却の報せを聞く。舜水樹はようやく秦軍だけに集中できると呟く。李牧は列尾を越えた秦軍はどこまで鄴に近づいたかと尋ねると乱城の文官は鳥達の報告では信じ難いことに秦軍は鄴に向かわずに途中の小城吾多に攻め入ったと報告する。
その言葉に李牧は衝撃を覚える。

信は時間がない状況下でわざわざ小さい城に寄り道して、普通に攻め落として何がしたいんだと焦っていた。中に入ると桓騎軍が民家の略奪をしていた。信はそれを見て、怒り阻止しようとするが、蒙恬は今回ばかりは桓騎軍の鼻が役に立っていると信を制する。摩論は城主の屋敷の地下、城外の地下に食糧庫を発見し、民家の隠し食含めて一粒残らず手に入れたと桓騎に報告する。桓騎はそれを王翦に言う。摩論は本当はしらみつぶしに探さなくても砂鬼の公開拷問をすれば一発なんだけど、王翦が民を傷つけた者は斬首に処すと厳命を出したため、大変であったと不満を口にする。

信は蒙恬から民を殺さずに食糧を奪っていることを蒙恬から聞く。河了貂は確かに兵糧の足しにはなるが、二十万いる軍からすれば微々たるものであり、吾多を落としに来たことで半日分の兵糧を使ったし、王都圏を守る趙軍にも同じく半日もの刻を与えてしまった、本当に兵糧を増やすために来たのであれば最低の愚策の極みだと吐き捨てる。
蒙恬は河了貂の意見に賛同するが、王翦がなぜ厳命まで出してこの都市の民を守ったのか疑問を感じていた。

吾多の民は広場に集められていた。王翦はその前に立ち、語り始める。怯えることはない、民間人であるお前達を傷つけることはこの軍の総大将王翦が一切許さぬ、だがこれは戦だ、心苦しいが我々はそなたらから食糧を奪うと共にこの城も取り上げねばならない、食糧のないそなたらには体力の尽きる前に何とかして隣の城まで移動してもらわねばならない、許せと話す。吾多の民は滅相も無い、命を助けてもらっただけでもありがたいと感謝する。王翦はならばすぐに発て、皆の道中の無事を祈ると言う。民はすぐに城外に出た。そこには解放された兵も混じっていた。
それを見た河了貂、蒙恬、王賁、桓騎は王翦の狙いは兵糧ではなく、外に出された民間人達だと理解するが、それが一体何なのかわからないでいた。
王翦は要領は得たか、次の城に行くぞと号令をかける。





王翦は衛星都市全てに同様のことをして、鄴の周りを大量の難民で溢れ返させ、受け入れざるを得ない状況にするのか。そこに兵を紛れ込ませて受け入れと同時に侵入し、中から門を開けるという作戦になるのか。
しかし、鄴が民間人の受入を拒絶したらこの策は敢え無く失敗に終わると思います。鄴に李牧がいなくとも鳥を飛ばして、絶対に民間人を受け入れるなという指示を出せばそれで終わりかと。
ここで、ポイントとなるのは王翦の民への対応になると思います。鄴に辿り着いた民間人達は鄴の門が開かないことに怒りを覚えることでしょう。「敵の王翦は寛大な対応をしてくれたのに味方に見捨てられる」と非難し、罵倒を浴びせ、下手をすれば門をこじ開けようとしたり、王翦軍が裏から手を回し、ハシゴで壁を登らせようともするかもしれないですね。さすがに自国の民間人は斬り捨てることはできなく、雪崩のように鄴入り込み、いつの間か秦軍の侵入を許してしまうということになるかと…
しかし、李牧なら自国の民間人を斬り捨てても、鄴に受け入れるなと厳命しそうだが…まだまだ王翦の策には続きがありそうですね

第513話 中華の予測

秦連合軍が列尾を抜けた一報は瞬く間に列国中に広まった。
媧燐は秦は本気で趙を滅ぼす気であると認識する。媧燐は李園に趙が落ちるのかと尋ねられると落ちないと断言する。李園は秦が失敗するのかと聞くと媧燐は趙王都圏は圧倒的に守りやすく、中に入られても、山脈と大河で狭められた出入口を奪い返し、封をすれば敵は勝手に中で窒息するだけだと切り捨てる。

呉鳳明も秦が敗れると考えていた。そこで凱孟軍を前線まで呼び寄せることにした。趙で王翦らの連合軍が消滅したと同時に眼前の騰軍を撃破して秦国に雪崩れ込むとした。
一方、媧燐は魏が先に動き、その対応に蒙武軍の力が割かれたところを見計らって、楚軍は一気に北上して咸陽まで叩き潰す予定とした。媧燐は秦を手に入れれば中華は楚のものだと高笑いする。

河了貂は進軍中、思考を巡らすが、嫌な予感しかしていなかった。この進軍は兵站の要を捨てた作戦であり、蒙恬も一番とってはいけない作戦だとはっきり言う。しかし、王賁は総大将の決定であり、自分達は持ち場で命を賭けるだけだと断言する。

桓騎は今度の作戦の勝ち方は想定できなかったものの、王翦とは白老の下で副将をやってきた付き合いで、桓騎の知る限りでは負ける戦は絶対しないと感じでいた。

友軍、敵軍はたまた列国の目が注目する中、王翦による鄴攻略の第一手は楊端和の山の民軍五万の分離であった。山の民軍は王翦軍、桓騎軍と分離し、陽土に前線を張る公孫龍軍九万に戦いを挑みに行ったのである。
河了貂は楊端和が北東の敵の動きを封じれば本軍は横腹や背後を討たれる心配をせずに鄴まで全力で走れると信に説明する。
大将王翦を先頭に鄴に向け本軍の足がいよいよ速まってきたまさにその時、王翦は突然奇怪な行動に出る。それは本軍十五万の進路を大きく北へ曲げ、鄴とは無関係な小都市吾多に襲いかかったのであった。




やはりこの一戦は秦の中華統一への大きな一歩になるか、滅亡への道になるかのどちらかになりますね。しかも相手は李牧。厳しい戦いになることは間違いないでしょう。
しかし、桓騎が王翦は負ける戦は絶対しないという言葉は心強いですね。桓騎ほどの知将に存在を認めさせるとは、やはりその実力は本物でしょうし、この作戦は勝利に向かっていると思います。

今後、連合軍は鄴の衛星都市を次々と落としていくような気がします。そこで兵糧を補充するとともに、鄴を孤立させ、包囲し、攻めるのかな…???
でもそんなのでは河了貂と一緒で悪い予感しかしない…

第512話 鄴の正体

秦連合軍が列尾を落として二日、つまり王翦が列尾城から突如姿を消して二日後にようやく王翦は目的とする趙国第二都市鄴をその肉眼で捉えた。
亜光は聞いていたものとだいぶ様子が違うという印象があり、近年李牧が大改修を行なったという噂は本当のようだと確信する。亜光は愚将には尋常ならざる城に見えますが、王翦様はどのように見えますかと尋ねると王翦は完璧な城だ、あの城は攻め落とせぬと発言する。
王翦は亜光に王都全域の地図を出させる。鄴までの間に存在する城は八つで正確かと聞くと亜光は斥候の話では紀音の北西にもう一つ小都市があるという報告があると話す。王翦は北西に何里だと確認すると二十里ほどと返す。王翦は地図を見ながらその場で軍略を練っていた。部下達は趙王都圏の深部であり、敵に見つかれば一溜まりもない場所で戦略を練り始めたことに不安を抱いていた。
そこに突然趙兵が現れ、どの所属だと詰問する、亜光は一振りで趙兵を蹴散らす。王翦は亜光に敵数を確認すると亜光はこちらの倍ほどかとと返す。王翦は良いかとさらに聞くと亜光は心ゆくまでと返す。王翦はその場で腕を組み、座って戦略を練り始める。

そしてそこから二日後列尾に戻った王翦は連合軍の将校たちに号令を下した。王翦は桓騎、楊端和、信達の前で語り始める。すでに気付いた者もいるかも知れぬが、昌平君の授けた鄴攻略の策はこの列尾で潰えた。よって、この連合軍は私の策をもって列尾を越える。ここからはこの王翦と李牧の知略の戦いだ、全ての兵糧を持ち、全軍で出陣、鄴を奪うぞと断言する。

秦連合軍は国門列尾を越えて、趙王都圏へ全軍進撃開始する。

太行山脈山道にある小城の切城、そこは北西からの王都圏入口アツヨまで二日の場所であったが、そこに鳥の急報が入る。
李牧は王翦が王都圏に入ってきたことに驚く。脱出口のない包囲戦の先に勝機を見出したというのであれば、それは完全な読み違いだと考えていた。李牧は騒つく一堂に静かにと制する。そして、聞いての通り秦軍が列尾を越えたことで、これから趙秦両国の命運を占う戦いへと突入すると語り始める。李牧は秦軍の狙いは鄴であり、もし鄴を落とされることがあれば王都邯鄲の喉元まで秦の刃が迫ることになり、趙王国が滅亡する危機へ瀕すると講じる。しかし、逆に秦連合軍を殲滅すれば秦は二十万という大軍と大将軍級の王翦、桓騎、楊端和、その下に連なる有能な武将達を一気に失うことになるのであり、秦王の中華統一という野望が潰えることに直結すると豪語する。李牧は結末は間違いなく後者だと断言した。
そして、南下中の扈輒将軍に列尾攻めの指示を出し、包囲戦に入ろうとする。




李牧と王翦の知恵比べ、互いに実力的には申し分ない者同士の戦いはどうなっていくか非常に楽しみであります。
李牧は王翦に手はないと高を括っているようですが、それを含めて戦略を練っているので、決して負ける前提ではないとは思います。それとも李牧としてはまだ隠している策があるのか…
しかし、王翦が完璧だと評した鄴をどうやって奪うのか…その作戦気になりますね

今回も名シーンがありましたね。
王翦と亜光のやりとり。
王翦の良いかという問いに心ゆくまでと亜光が返すところは心打たれました。互いに信頼しているのだなぁと感じましたね。