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第486話 文官達の戦い

咸陽では文官達が激論を交わしていた。
趙だけでなく、魏や楚も大軍を秦に向けていることもあり、再度合従軍が興る危険性を危惧していた。
しかし、昌平君は合従軍は興らないと断言する。四年前の合従軍は二十年間楚の宰相を務めた春申君の名の信頼と王騎、劇辛を討った李牧の名の信頼の二つが重なって興りえたものであり、すでに春申君は死去し、李牧も先の失敗の汚名返上ができていない現実と、それ以外で大掛かりな絵を描ける人物はいないからであった。さらに昌平君は自ら二度とあんなものは作らせないと豪語した。介億は国間のつながりを妨害する遊説の徒を国外に多くはなっていると発言した。
しかし、昌平君は見当たらぬといったものの、東に鎮座する人物だけは力が未知数であり、危険性を感じていたが、それは口には出さなかった。
政はそれを聞き、ならば次に刃を交える国はと問うと昌平君は趙国ですと返答する。昌平君は黒羊という楔を活かし、次が本当のとまで言うと、いきなり伝令が宮殿に入ってきて、急報を告げる。
それは蔡沢から国運に関わる知らせが伝えられる。

黒羊での引き継ぎを終え、信は蒙恬に後を任せ、出発しようとする。しかし、そこに咸陽本営からの急報が入る。
それは趙との一時休戦というものであった。伝令は理由も特に知らすこともなく、相当慌てながら各隊を回っていた。その様子を見て、蒙恬は昌平君に突発的な想定外の出来事が起きたと推測した。

そして、数日後、咸陽にものものしい警備の中、国籍不明の一旅団が到着したのであった。得体の知れない車からは予想外の人物が姿を表す。その姿は王建王と李牧と蔡沢がであったのだ。
蔡沢は一人本営に赴くと文官に囲まれ、李牧と王建王を連れてきた理由を詰問される。蔡沢は独断で動いたことを詫びるものの、段取りを踏んでいては危険度が増し、実現困難であるからだと釈明する。昌平君はなぜあの二人を連れてきたのかと問うと蔡沢は一人であると返す。
政は斉王かと言うと蔡沢はいかにもと返答し、斉王が咸陽まで来るには趙国を通らねばならず、その旨を趙に伝えたところ、無事に通す条件として、金とは別に李牧も同行し、秦王との謁見する機会をと言われたため、可として連れてきたと白状する。
周りの文官からは王をないがしろにし、大逆罪だと怒りを買うが、蔡沢はかつて東帝、西帝と中華に恐れられた時代もあった東の斉王と西の秦王が直接会って対話する意味を考えると自分の細首程度喜んで差し出すと言い切る。
蔡沢は政に最後の仕事として、列国を滅ぼさんとする王とそれを東の玉座で受けて立つであろう斉王と舌鋒をお交わし下さいと懇請する。




蔡沢の思惑はなかなか粋なものだと感じました。蔡沢は政と呂不韋の舌戦から政の中華統一の意志に心動かされたのでしょう。蔡沢は自身の年齢を考慮し、中華統一の最後まで見ることができないため、最後の敵となりうる王建王との舌戦を実際の戦いに見立てて、行く末を思うのかなと推測します。
しかし、蔡沢の言う通り、これを順序立ててやったら絶対に実現しないでしょうね。そもそも秦が中華統一を狙っていることは周知の事実ではあるものの、それを秦王が他国の王に語るとなると重みが遥かに増し、警戒される危険性が増すからであります。しかも、今回は李牧も来ちゃってますし…間違いなく蕞での一件が本当に政の力であったのかどうかを見極め、今後の対策を考案するためだと思われます。

第485話 蒙恬の報せ

着々と砦化の進む黒羊の丘。膨大な仕事を引き受ける飛信隊の下に楽華隊が現れる。
信は蒙恬を迎え、酒を用意する。
蒙恬は慶舎を討って最大武功をあげて、同士討ちの禁を犯して武功帳消しになった信に乾杯と皮肉を言う。そして、蒙恬は慶舎討ちの報せを聞いて、完全に信が将軍になったと思い、驚いたと感想を述べた。内輪揉めで昇格が消えたが、愚直さが揺るがないのは流石だと感じていた。
信は何の用で来たのかと蒙恬に尋ねる。
蒙恬は現場の引き継ぎだとし、飛信隊の持ち場は全て楽華隊が引き取ることとなった。渕さんは砦はまだ完成してないと危惧するものの、蒙恬はしっかり仕上げると言い、これは総司令の温情であり、隊にとって休むことも大切なことだと諭す。
信は休みはいらないと反発するが、飛信隊の隊員は疲れていると信に文句を口にする。蒙恬は桓騎と揉めて思うところがあるだろうから、一度家に帰って、しっかり休んで気分転換でもしろと話す。
信は気分転換ですることもないと言うと蒙恬はお見合いを勧める。信は驚き焦るが、黒羊を取られて趙がこのまま黙っている訳はなく、前線を離れるわけにはいかないと固辞した。
蒙恬は秦軍が黒羊を取ってから秦国に牙をむこうしているのは趙だけでなく、楚、魏、韓、斉、燕全てが中華の均衡を崩そうとしている秦に対して、水面下で謀を進めており、次の戦はかなり大きくなると推測していた。
信はだったらなおさらと言うと蒙恬は否定し、だから今休むんだ言い、次が大戦なら敵国も秦もそれなりの準備期間に入るため、今しっかり休んで傷付いた飛信隊の回復と進化をはかれとの昌平君の意図であった。
河了貂は黒羊戦を通して、飛信隊は攻めはともかく守備力は決して高くなく、それは戦が大きく長くなると致命傷であり、羌瘣隊との連携、弓隊の配備等やるべきとことはたくさんあり、時間をかけて練ればまだまだ飛信隊は強くなると断言する。
蒙恬は霊凰、慶舎という大物食いをしている飛信隊の本営からかかる期待はもはや小さくないと言うと信は納得し、帰還することを了承する。

蒙恬は今から大変になるのは文官であり、次が大戦になるのであればそれまでの準備が戦の勝敗を大きく左右させるため、軍略補強、整備、表、裏の外交の仕掛けなどであると語る。

蒙恬の言葉通り、この時すでに列国の計略、謀略の手が水面下で複雑にうごめいた。秦から東、遠く離れた趙と斉の国境付近「香」という小さな城邑では咸陽の目を盗んで全く予想外の三人の大物が密談の席につこうとしていた。そこには蔡沢、李牧と斉の王建王がいた。





久しぶりの蒙恬登場にファンとしては非常に喜んでおりますが、地味な登場だし、今週のみだと思われるので、ちょっと残念です。次の大戦で活躍することを期待してます。
蔡沢の目論見が読めず、不安を感じております。蔡沢は呂不韋派閥だったので、現政権では不遇の扱いになっているだろうから、面白くないのでしょう。そのため、李牧、王建王と結託して、秦を滅ぼす算段をするのではないかと思います。たぶん斉は蔡沢との約束の秦領土を貰うというのが果たされていないでしょうから、乗ってくるのでしょう。
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第484話 それぞれの出発

信は河了貂と那貴の桓騎の分析を聞いて、一体何者なんだと問う。那貴は桓騎は謎の多い人だと言い、なぜあれほど強いのか、家族はいるのか、どこから来たのかなど雷土ら幹部でさえ知らないと話す。しかし、過去に一度だけ最古参の者から桓騎の根っ子の部分について聞いたことがあった。最古参の砂鬼一家は桓騎の根にあるのは岩をも動かす怒りであり、それは全てに対してであると語っていた。

咸陽に朗報が入る。
伝令は秦軍が黒羊戦に勝利し、敵将慶舎を飛信隊の信が自ら討ち取ったと伝える。昌文君は信が慶舎を討ち取ったことに驚き、目を丸くし、声が出ない状況になった。
しかし、伝令はその後、桓騎と信が内輪揉めをし、死人が出たという報告が入る。しかし、それも沈着したと報告される。
介億は戦の内容は不明であるが、黒羊を五日で勝利するのはさすが桓騎であると評価する。昌平君は桓騎が自分の予測を上回る戦いをしたと想像したが、黄龍と介億に黒羊を拠点化させる指示を出し、黒羊の先の趙領土へと意識を向かわせていた。

黒羊では摩論と河了貂が口論していた。それは西の丘一つを飛信隊だけで砦化しろというものであった。さらに黒羊の外側の警邏隊の指示も出ており、貂は冗談じゃないと反発するが、摩論は八千の内五千はいると指摘する。しかし、貂は重傷者ばかりであり、慶舎本隊の奇襲を受けた時にボロボロになったと返す。
そこに雷土が現れ、それはてめぇらがアホだからだろうが、お頭みたいに頭を使って戦わないから死傷者を出すんだと切り捨てる。
貂が雷土に反論しようとするが、信はもういいと貂を止めて、了解する。信は桓騎は顔も出さないで何をしているかと問うと雷土は何でてめぇごときにいちいち顔を見せなきゃいけないんだと睨み付け、てめぇなんぞお頭の眼中にはこれから先も一生入らねえんだよと吐き捨て去る。

信は丘の上で物想いに耽る。そこに羌瘣が現れ、大人の戦い方を見せつけられたなと話し出す。信は戦い方はクソだが、桓騎とはまだこの先も戦場を一緒にする機会があるだろうから、結果は真正面から受け止めなければいけないと感じていた。
羌瘣は桓騎が強かろうと制止すべきところは制止すべきだと話し、信はそれに同意し、そのために桓騎より先に大将軍になり、上に行く必要があると決意する。羌瘣は先は難しいなと言うが、信のやり方で大将軍になればいいんだと諭す。それを聞き、信は桓騎に負けないことを心に誓った。
一方、飛信隊は大将桓騎への反逆行為の咎により、慶舎討ち取りの戦果は相殺とされた。しかし、その際に信の想いを皆が聞いたことで、隊の結束はより強くなった。

桓騎本陣では怒号が飛んでいた。それは那貴が飛信隊に移ると桓騎に伝えたからであった。雷土はそれに怒り、内臓ぶちまけられてぇのかと手にもっていた器を粉々にした。
那貴はそう熱くなるなと言い、桓騎軍は軍であって、軍ではなく、堅苦しい縛りがないところが桓騎軍の良いところであるので、問題ないですよねと桓騎に確認する。
桓騎は那貴に理由だけ教えろと言う。那貴はただのいつもの気まぐれですよと返し、強いてあげるなら飛信隊で食う飯は意外と美味いからと語る。

これらの出来事はこれから上に進む飛信隊にとっては大きな収穫であった。そして、また黒羊戦を樹海にひそみ別の収穫を得た新たな存在もいた。それは李牧であった。
李牧は今回の敗戦は桓騎の力を見誤った自分の責任だと言う。副官舜水樹は慶舎の損失は痛いが、その代わりに得たものが二つあると語る。それは隠れた名将紀彗の発見と桓騎の弱点であった。
黒羊戦の翌年秦は合従軍戦以来の超大軍を興して趙軍と激突する。その時、黒羊がその前哨戦であったことに気づく。




まずは信の慶舎獲りが内輪揉めと相殺になったことは残念です。今回の戦いで信は将軍になると思っていたので…
ま、でも飛信隊のさらなる結束と那貴が加わったことは非常に隊としても大きな収穫だと思います。特に那貴は今までの飛信隊にはなかなかいない頭の切れるタイプだと思うので、貴重だと思います。
翌年は秦対趙の一大決戦ですね。秦は趙を滅ぼしにかかり、趙は李牧を中心として、防衛を図るのでしょう。しかし、桓騎の弱点が李牧にバレてしまっているため、厳しい戦いになりそうですね。
大将は騰がいいな〜、、、いや、今回の勝利で桓騎が大将軍になって、桓騎が大将になるのか???

第483話 勝敗の夜ふけ

時は黒羊戦の五日目の午後に遡る。飛信隊は丘の麓で兵を待機させていた。桓騎からは丘を占拠した趙軍が桓騎軍を追って降りるので、その間に丘を奪取するよう命令が下っていた。
信はそんなにことが上手くいくかと反発していたが、眼前に紀彗が丘を駆け下りていく様を見て、唖然とする。この時、丘を占拠していた趙軍のおよそ半分を占める紀彗軍が下へ降り、丘を後にした。一方金毛、岳嬰率いる慶舎軍は丘に留まり、徹底抗戦の構えを示す。それに対し、樹海内に伏していた桓騎兵が続々と丘に攻め上がったのだ。
序盤高低差と砦を盾に趙軍が大いにこれを返り討ったが、最終的には砦を突破したゼノウ一家と飛信隊の前に敗れ去ったのである。

信は趙軍が続々と丘から降りていくのを目にする。岳嬰は最期まで戦うことを宣言するが、金毛はここで死ねば負け犬で終わるだけであり、慶舎の仇を取るためにもここで退くべきだと説得する。
そして、金毛は黒羊からの完全撤退を決め、秦軍の完全勝利となった。

一方、桓騎は紀彗軍が丘を降りて追ってきたことを確認すると十分引きつけて、そこから戦わずに分散し、四方へ逃走した。紀彗は分裂したいくつかの桓騎軍の小隊を討ち、そのまま離眼城へ入った。
そして、桓騎は再び黒羊に戻り、すでに桓騎軍が占拠した中央丘にゆっくりと登頂したのである。


河了貂は那貴と戦の全容を解明していた。黒羊戦四日目、飛信隊が慶舎を討とうとしていた頃、桓騎はすでに標的を慶舎から紀彗に移しており、特別拷問をしていた離眼兵から紀彗の過去をすべて聞き出していた。そして、紀彗と離眼の関係を知った桓騎は丘取り合戦を止めて、趙軍に明け渡す。
趙軍に丘の砦を進めさせる一方で、黒羊の村焼きを行い、一般人の死体を集め、死体を紀彗に見せて、離眼を同じ目に合わせるぞと脅した。その結果、紀彗は丘を捨て、離眼救出に向かい、趙軍は破れたのである。
戦争四日目で大局も動き、どう丘を攻略するか軍略家なら前のめりになるところで、桓騎は丘ではなく、紀彗一人を的にして、戦いを切り替えたのである。そして、村人達の死体を必殺の武器として、紀彗の弱点をえぐり、丘から引きずり降ろして、黒羊戦を勝利に導いた。
河了貂は全容を明らかにしたところで、こんな勝ち方は昌平君でも李牧でも真似はできないとし、紀彗が離眼のために戦を放棄するかは賭けであり、戦は遊びではないと怒り、戸惑う。
那貴はだが真似できない分、圧勝劇も桓騎ならではとは話す。丘は獲ってからの砦化も難題であっが、桓騎は趙軍にそれをやらせて、完成に近い形で手に入れたのだ。そして、消耗戦になるはずの丘取り合戦を止めたお陰で、戦死者の数は開戦前の予想の半分以下であったのだ。





桓騎の恐ろしさを改めて感じた一戦でしたね。被害を最小限に抑え、砦化の仕事は敵にやらせる。
しかし、飛信隊が慶舎を討ち取ってなかったらと考えても、兵の半分がいなくなってしまったら、いくら慶舎でも丘を守りきれなかったのだろうとも思います。
黒羊を手に入れた秦はこれからどう軍略を描くのか、気になりますね。

第482話 離眼と趙国

桓騎は紀彗の弱点を抉り、趙軍を混乱に落とす選択を迫る。紀彗は金毛に対して、丘を捨てると宣言する。金毛は紀彗に対して丘の占拠こそ戦の勝利であり、自らそれを捨てるというのはあり得ないと諭す。しかし、紀彗は離眼を助けに行かなければならないと自らの意志を曲げるつもりなかった。
金毛は桓騎軍が離眼を落としたとしても飛び地のため、趙軍に包囲され滅するだけだとし、明らかに紀彗を誘い出す罠であり、紀彗軍が去った後に丘を攻め上がる兵が隠されていると説得する。
馬呈はそんなことは紀彗も当然わかっているが、それでも追わないと必ず腹いせに離眼を血の海にすると焦る。
金毛はせめて二日待てば砦が完成し、慶舎軍だけで丘を守れると譲歩する。
しかし、紀彗は今の離眼は桓騎軍を相手に半日も持たないと受け入れなかった。
そこに岳嬰が割って入る。
岳嬰はそんな身勝手は通用するわけがなく、どうしても行くのであれば殺してでも紀彗らを丘に留めると刃の先を向ける。馬呈は岳嬰の矛に自分の斧を乗せ、その前に自分が岳嬰を倒すと怒りを露わにする。
金毛はもしこの場で紀彗を殺せば全離眼兵は決死隊となって、慶舎軍に襲いかかり、それが趙軍の選択の中で最悪の道だと叫び、今我々はこの戦いの勝ちか負けの究極の選択を桓騎から突きつけられており、その判断を下すのは趙軍の実質的総大将である紀彗だと睨みつける。
金毛はさらに続ける。
最後に中央の武将として離眼城城主紀彗に言っておくことがある。それは慶舎軍は離眼のためでなく、趙国を守るために黒羊に戦いに来たのだ。黒羊を失えばここを拠点に周囲一帯が秦軍の侵略を受けるだろう、離眼はその中の一城に過ぎず、実際にそうなった時の趙人の血がどれほど流れるか予測すら立たぬ、そして一帯が秦の領土と化した時、言うまでもなくさらに奥深くまで次の侵略を受けることになるため、そうさせぬための黒羊戦であったのだ。それを防ぐために皆は戦いの血を流し、死んでいったのである。離眼一城を救いに行くというのであれば、その全てを無に帰すことになり、離眼一城のために趙国西部一帯が失われる可能性がある。それほど重い選択なのだ、よく考えて決断しろ紀彗と言葉を浴びせる。
紀彗は金毛の言葉に何一つ返事ができないでいた。


離眼城の城壁にいる兵士は遠くに物凄い数の兵士を確認する。鐘を鳴らし、男は全員城壁に登らせ、女子供を地下道へ避難させる。桓騎が来たと焦るが、実際に来たのは紀彗であった。
そして、紀彗は離眼を離れる準備を始める。




金毛の言うことは最もであり、何一つ間違っていなかったが、やはり紀彗も人であり、頭では行ってはならないと分かっていても、止めることはできなかったのでしょう。
しかし、そう考えるとみんな桓騎の掌の上でクリクリ踊っているだけですね…
桓騎、ホント恐るべし…

第481話 苛烈な贈物

飛信隊に平穏が戻る中、桓騎の伝令より最終指令が下る。信は伝令より今日で戦が終わると本当に桓騎が言ったのか驚きを隠さず確認すると伝令は確かにそう言ったと返す。

趙軍は中央の丘の要塞化を終えていた。しかし、そこにいた物見はある異変に気付き、紀彗の元に駆け寄る。急いで麓まで来てほしいと。馬呈は敵襲かと確認すると伝令は敵襲ではなく、桓騎からの贈物と伝文だと返事する。
紀彗と馬呈が麓まで下りると砦の外まで出て行くとこになった。
そこで紀彗は衝撃的なものを目にする。
そこにはアーチ状のものが設置されていた。そこには何百もの黒羊の民の女、子供達が惨殺されて、アーチ状に括り付けられていた。
それを見た紀彗は怒りに震える。
そして、部下より桓騎からの伝文を聞く。敬愛なる名将紀彗殿へ、副将ながら獅子奮迅の活躍お見事、その紀彗殿を称えて、この骸の巨像を贈る、じっくりと見て、目に焼きつけろ、いいか紀彗、これ以上の惨劇をお前の離眼城で起こしてやる故楽しみにしていろという内容であった。それを聞き、紀彗は烈火の如く怒りが湧き上がる。

そこに急報が入る。
それは桓騎軍は離眼城に向かって移動し始めたことを伝えるものであった。




間違いなく紀彗は中央丘を捨てて、桓騎軍を追いかけるでしょう。軍本来の目的は民を守ることなので、自分の城の民を見捨てて、黒羊戦に勝つという選択肢はないでしょう。金毛は残るかもしれないですが、、、、
桓騎は紀彗が追ってくることはわかっているので、各所に伏兵をしたり、対策はしっかりしているでしょう。背を取られても来るとわかっていれば、大して怖いものではないですからね。さらに飛信隊と挟み撃ちにすれば紀彗軍は壊滅となるでしょう。
残された金毛は自分達の兵だけでは中央丘を守ることはできないため、撤退しようとするが、そこも桓騎軍に絡め取られそうですね。
そして、守る軍がいなくなった離眼城は桓騎の魔の手に堕ちるのか…

第480話 尾平と飛信隊

飛信隊と信への熱くみなぎる気持ちを桓騎にぶつけた尾平。しかし、返り討ちに遭い、馬乗りにされ、顔面に拳を何発も叩き込まれて、意識が飛んでいた。
そこに那貴が現れ、桓騎兵を止める。しかし、桓騎兵はてめぇには関係ないと続けようとするが、那貴は自分が声掛けをして、尾平を桓騎軍に送り込んだため、関係あると返す。それに怒りを感じた桓騎兵は雷土一家の自分にケンカを売ったら、那貴のような小さい組はとまでいうと那貴は桓騎兵の首に膝掛けを食らわせ、首の骨を折り殺したのであった。那貴は一家をバカにしたのが悪いと言い、おれがキレたら雷土より怖いと脅し、桓騎兵を退散させた。

飛信隊の陣では田有が羌瘣に手当を受けていた。羌瘣は桓騎を少し甘く見ていて、危うく田有を死なせるところだったと反省する。田有は尾平が乱入してきて結果的に命拾いしたなと呟き、さっき尾平が帰ってきたと騒いでいたなと言うと羌瘣は桓騎兵に暴行された瀕死の尾平を那貴が運んできて、今信が尾平についていると教える。
それを聞いた田有はどっと疲れたな羌瘣と口にする。羌瘣はそれに同意する。


尾平は意識を取り戻す。そして、傍に信がいることを確認する。
信は語り始める。実は昔戦地で一般人の家に入って盗み食いをしたことがある。ちょうど三百人将になったくらいの頃、一回無茶して隊が散り散りになり、皆が集まるまで一週間以上かかった。信は一人で深手を負い、食い物もなく、倒れそうだった時に茂みの中に民家を見つけたのであった。その住人は戦が始まることを察知し、慌てて逃げたようで作りかけの料理がそのままになって、腐りかけていたが、信は上がり込んでそれを全部平らげたのであった。意識は朦朧としたが半分腐ったその食物がとんでもなく美味かったのを覚えていた。
そして、その半年後にまた似たような状況になったのだ。住人は逃げ出して作った料理はまだ綺麗なものであったが、飢えで倒れそうではなかったというのが、前回と異なる点であった。しかし、腹は非常に減っていたので、また食べたが、その味はクソみてえな味がしたのであった。その時信はそうだよなと納得したのだ。子供の頃光り輝くものであり、ヒョウと思い描いた天下の大将軍の姿は陵辱や虐殺などはなかった。信はその時にヒョウと夢見た天下の大将軍の姿は今でも色あせる気は全くしなかった。もし、桓騎みたいなやり方で勝ち続けてもヒョウは喜ばないし、信も何も嬉しくない。ガキみたいなことを言っているのは十分理解しており、飛信隊の隊員にも青臭いとバカにされ、いろいろ我慢させてしまっているのもわかっている。しかし、そこは譲れなく、子供の頃に描いた誰よりも強くてカッコいい天下の大将軍に本気でなりたいと思っており、飛信隊もそういう隊でありたいと思ってると力強く語る。
天幕の外で信の話を聞いていた隊員達はその言葉を聞き、涙した。

信は尾平におれのわがままに付き合わせて悪いなと言うと尾平は一つも悪くないと叫ぶ。みんな好きで信のわがままに付き合っていて、全部承知の上で信と一緒に戦いたいと思っているんだ。それに実際我慢なんてことはない、桓騎軍と飛信隊は決定的に違っており、飛信隊は信と一緒に戦っているから、心が潤っているから略奪も陵辱も必要ないと豪語する。そして、尾平はもう一度飛信隊に入れてくれと懇請する。信は当たり前だ、一番賑やかな尾平がいないと隊が始まらないと返す。

黒羊五日目は中央丘を占拠し、砦化を進める趙軍に対して、秦軍は内輪揉めで半日を費やしたのであった。
だが驚くべきことにこの五日目の残り半日で黒羊戦は終結を迎えるのである。





信の子供の頃の夢の大将軍になりたいという気持ちとそれを支えようとする飛信隊は一層結束は固くなり、また一段と強い隊になるでしょう。
心を揺り動かされた良い回だったと思います。尾平も戻ってきたし。

しかし、ここから桓騎はどんな手を打ってくるのか。砂鬼一家がいたこと、桓騎兵がゲロを吐いていたことから、あの大きな輪のような物体はきっと人体を使った何かなんでしょうね。
少なくとも紀彗が砦化した丘を放棄して、降りてこざるを得ない状況をどう作り出すのか気になりますね…

第479話 尾平の叫び

尾平の頭に幾重にも反芻する信の涙と拳。飛信隊脱退を告げられた尾平は一人佇んでいた。
尾平は信に殴られた後、羌瘣に縋るが、羌瘣は尾平の頬を殴り、自業自得だと怒る。信と同郷で一番の古参のくせに全く飛信隊のことがわかってないと吐き捨てる。
桓騎はシラけたなと呟き、信達にもう行っていいぞと興味を失っていた。信はまだ話は終わってないと睨むが、桓騎はすでに村焼きは全部終わっており、これ以上はなく、気が変わる前に失せろと返す。

尾平と一緒に桓騎軍に参加していた飛信隊員は尾平に対して、信のところに行って、弁明しようと言うが、尾平は無理だよと言い、城戸村に帰ると丘の上でいじけていた。尾平はこれまで、どれだけ血と汗を流し、何度も死にかけたのにたかだか腕飾一個とっただけでクビなんてふざけるな、村人のものとは思ったが、村は崩壊しており、それが何だってんだと想いを口にした。
尾平はさらに自分は信や羌瘣と違い、普通の人間であり、命がけで戦ってきたのに、腕飾一個で出て行けなんて、飛信隊のことを一番わかってないのは信じゃねえかと涙ながらに叫ぶ。

そこに丘の下より桓騎兵の笑い声が聞こえてくる。それは信が桓騎本陣に殴り込みにいったときの話であった。村人からの略奪や殺戮を禁止している飛信隊であったが、隊員の一人が腕飾を奪って、ぶっ飛ばされたとのことで、上もアホなら、下もアホだと笑う。さらに我慢の連続で見返りもなく、それで討ち死にした日には正にクソみたいな死に様だと笑い飛ばす。しかし、一番の問題は信であり、盗るのも怖い、犯るのも怖いとあれば将としても、男としても器は小さい、しかし、その小物は中華統一と天下の大将軍になるという夢を持っていると嘲笑う。

尾平はたまらず丘を駆け下り、桓騎兵を殴る。尾平は殴り返されるものの、信を笑う奴はただじゃおかねえぞと叫ぶ。器がでかいから盗みも犯しもしないのであり、信のために死ぬことはクソ死にではない、弟は立派に信を命懸けで守ったのだ、信が綺麗事を言っているのは百も承知で、色んな誘惑はあるが、それらも関係ないくらい、信のことが好きで、みんな信と一緒に命をかけて戦いたいんだと力強く言うと、尾平はそれが飛信隊なんだと改めて認識し、涙を流す。



まずは来週休載です。
尾平は改めて飛信隊への想いを再認識しましたが、この後どうすれば信に許してもらい、復帰できるのか…
信も頑固なところがあるので、単に謝るだけではダメなんだろうな…きっと

第478話 殴り込みの末

秦軍内の対立の中、リン玉に連れられ、尾平が信達の前へと急ぐ。

桓騎は信に対して、中華統一すれば戦がなくなる平和な世が来ると言いたいだろうが、それは極悪人の所業であり、敵国が抵抗できなくなるまで殺戮、略奪をし尽くすことで、それを喜ぶのは秦人だけだと断言する。さらに狂気じみた正義を振りかざすのが一番タチが悪いと続ける。
信は違うと否定するが、羌瘣は信にもういい、こんな連中に話をしても無駄と切り捨て、無意味な村焼きを止めさせることに話を向ける。桓騎は無意味だと決めつけるなと言うが、羌瘣は敵将慶舎の首は信が昨日討ち取っており、無意味だと豪語する。
羌瘣の発言に桓騎軍は騒めき出した。その言葉に桓騎は昨日の戦い方が変わったのはそれのためかと理解する。羌瘣は討った飛信隊を裏へ追いやったことをいいことに趙は隠して戦い続けており、敵は丘の砦化を進めている、村焼きなんかやってる場合ではないと言い、今すぐ慶舎の死を両軍に知らしめて士気を反転させ、一気に丘攻めに出るべきと桓騎兵に向かって発言する。
しかし、桓騎は村焼きを続行し、黒羊中の人間を皆殺しにすると考えを変えなかった。
羌瘣は桓騎に斬られないと思っているのか、相応の覚悟できていると返すと桓騎は自身を殺して、飛信隊が皆殺しにあう覚悟だよなと確認し、部下に田有の首を今すぐかき斬れと命令する。
羌瘣は桓騎の首を刎ねるぞと大声で叫ぶが、桓騎は羌瘣は絶対に殺せないと言い、部下に田有を殺せと再度命令する。その命令を受け、桓騎兵は剣を田有の首に押し付け、それにより、首から血が噴き出す。

そこに尾平が現れ、どっちも止めろと叫ぶ。尾平は焼かれた村は武器や兵糧の保管場所で秦軍の動静を趙軍に教える物見の役割もしており、一般人への陵辱とは異なるため、謝罪して隊の元へ戻るんだと説得する。
信は村人が趙軍だって見たのかと問うと尾平は見てないが桓騎兵がそう言ったからとだけ返した。信は曖昧な返事に尾平に詰め寄り、趙軍が関係していれば女や子供まで皆殺しにしていいのかと問い質す。尾平は状況が飲み込めず、しどろもどろになりつつも、小声でそんなことよりも桓騎軍が森の中で飛信隊を討つために戦闘体勢に入ろうとしていると警告する。しかし、信はそんなことじゃねえだろ、自分で何言ってるのかわかっているのかと尾平を締め上げる。
その時、尾平の懐から紫水晶が落ちる。雷土がそれを拾い上げ、これは上物であり、大事に取っておけと尾平に渡す。
信は尾平にまさか死人から剥ぎ取ったのかと問い詰める。尾平は違う、桓騎兵にもらったんだと必死に否定するが、信に焼かれた村の人間のものとは考えなかったのかと聞くと、尾平はそれはと言葉に詰まる。信はその尾平の姿に涙を流し、渾身の力を込めて、尾平の顔面を殴る。尾平はその勢いに体ごと吹っ飛んだ。
そして、信は二度と飛信隊に戻ってくるなと尾平を追放した。




信にとって、信頼していた尾平が飛信隊の最もやってはいけないこととして禁止していることをして、非常に悲しかったと思います。
尾平は飛信隊追放になり、このまま桓騎兵になるというわけにはいかないでしょうから、一度城戸村に帰るのかな…

信と桓騎の対立はこのまま信が引き下がることにより、桓騎暴挙が続き、趙軍が丘を降りてきたところを狙って叩くという作戦が功を奏し、桓騎軍の勝ちとなるでしょう。
信は慶舎をとったことにより、将軍に昇格すると思いますが、自分の戦いを展開するには将軍になるしかないと思うんでしょうね

第477話 矜持の咆哮

残虐の限りの光景に怒りの眼を浮かべる信と羌瘣。火球の如く桓騎の元へ馬を走らせる。
貂は行ってはダメだと止めるが二人は聞く耳を持たなかった。貂は田有と去亥に信たちを追うように指示し、渕さん達には散っている小隊を探して飛信隊を一ヶ所にまとめ、いつでも戦闘になっていいよう臨戦体形を組むよう指示する。それは下手をすれば飛信隊と桓騎軍の戦争の可能性を意味していた。

桓騎本陣に信と羌瘣が辿り着き、信は桓騎の名前を怒鳴りつける。桓騎は信を見て、生きていやがったのか面倒くせーのがと呟く。信は丘を奪われた挙句、無関係の人間からものを奪い、いたぶり、皆殺しにして、一体何をやってんだと叫ぶ。桓騎は冷静にただの陵辱と虐殺だと言い、おれは何でもやると最初に言ったと返す。信はだが全て勝つためにやると言ったぞとさらに叫ぶ。桓騎はだからこうやって勝つんだよと言う。
その返答に信は怒りが増し、桓騎に詰め寄ろうとするが、雷土が信を殴り止める。雷土は信を骨のあるやつかと思ったが、何にキレてんだと信の頭を鷲掴みにする。雷土は趙に攻め込んで、趙人が死ぬ、戦争やってんだろ、それとも弱者をいたぶるのに加えてほしかったのかと言うと信は裏拳を雷土に食らわせる。それを受け、雷土は反撃するが、信の雷土の顔面への渾身の一発が炸裂し、雷土は宙を舞う。黒桜はすかさず信に矢の照準を合わせるが、羌瘣が弓を切り、黒桜を投げ飛ばす。そして、桓騎の首に剣を突きつけ、全員動くなと警告する。
信も雷土から剣を突きつけられていた。そして、雷土はもうただでは収集つかない状況になったと怒りを露わにする。
信はその状況で、昔、落とした城を陵辱していた乱銅という千人将を斬ったと話す。乱銅はこれが戦争だと言ったが、信はそれは戦争じゃねと豪語する。今は五千人将であり、侵攻がどういうものかわかっている、制圧した地での反乱に対する刃と無力、無抵抗の人間に向ける刃は決して違う、それが戦争だと言い切るやつは武将や兵士ではなく、ただの侵略者だと言い、さらにそんなやつらがらどれだけ強く、勝ち続けようとも中華統一なんてできるわけがねえと言い切ると、桓騎兵は一様にその言葉に心打たれる。
しかし、桓騎は高らかに笑い出す。そして、信を指差し、参った、お前が今まであった中で一番悪党だと言い放つ。




信と桓騎のまさかの舌戦が繰り広げられるとは思いませんでした。それぞれの考える中華統一とはを語り出すのでしょう。まさに政と呂不韋の時のように。
信が熱く桓騎に反論するが、最後は尾平が出てきて、飛信隊の矛盾を突き付けるのでしょうね…信はその時どうするのか気になりますね。
しかし、仮に信の言い分が通って、趙人を解放したら、ここからの一手は何もなく、まさにこの戦は趙側の勝利になりますね…それでいいのかとも思いますが、大義名分の方が大切か、、、、




ここ最近、たくさんのコメントを頂き、感謝しております。しかし、申し訳ございませんが、来週は中国出張のため、ブログ更新が土曜の夜遅くになると思います。皆様にはご迷惑お掛けしますが、何卒宜しくお願い致します。

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