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第498話 大軍勢の緊張

静かに沸き起こる熱気と士気。今回の趙との大戦に向かう大軍が一堂に会していた。
干斗ら飛信隊新人はあまりの迫力に気圧されていたが、そこに楚水が現れ、練兵は十分にした、自信を持って胸を張れ、俺たちが飛信隊だとなと声をかけると、干斗は大声を上げ、気合を入れ直した。
松左や崇原は合従軍以来の大軍に本営の本気さを感じていたが、総大将が誰だか明かされていないことに不思議さを感じていた。渕さんは信に聞くものの、今日まで明かせないと言われていた。
崇原は総司令に呼び出されてから信と河了貂に力が入っており、情報漏れを恐れて大将の名すら隠すほど慎重であるということはそれだけ今回の戦が大事であると感じていた。

そこに昌平君が壇上に上がる。
昌平君はこれより全軍で趙西部へ攻め込む。この一戦からいよいよ宿敵趙国と真っ向から総力戦に入る。敵も必死だ、死に物狂いで反撃に出てくるだろう。だが、絶対に退くな、必ず勝利し、趙の地に秦の旗を掲げてこいと集まった大軍の士気をさらに高める。
昌平君はではこれより軍を率いる将軍を発表する、桓騎将軍と叫ぶ。その名を聞いた飛信隊には衝撃が走る。しかし、田有は黒羊を落とした大将で、西部攻略なら桓騎がそのまま大将を務めるのが自然だと口にする。
昌平君はそして軍を率いる将軍をもう一人発表すると言い、楊端和が壇上に上がる。そして、山の民が現れる。その仰々しい面持ちに新しい飛信隊員は味方かどうか怪しみ、言葉も通じないことから不安感が募り始めていた。しかし、信はバジオウとタジフの前に出て、また一緒に戦えて嬉しいと握手を交わす。
楊端和が出てきたことに桓騎軍が騒めき立つ。桓騎が総大将であると思っていたからである。昌平君は桓騎と楊端和はそれぞれの軍の大将であるが、全軍の総大将ではないと説明する。今回は大いなる戦いとなるため、三軍で打って出るとし、三つ目の軍の将であり、総大将は王翦であった。
今回の対趙の戦いは王翦、桓騎、楊端和の連合軍隊であった。




王翦、桓騎、楊端和、さらに飛信隊、楽華隊、玉鳳隊の三隊は相当物々しい雰囲気でしょう。
しかし、王翦、桓騎、楊端和は個性が強すぎて連携などあり得ないような気がしますが…王翦はまとめきれるのだろうか〜
作戦としては趙西部を王翦、桓騎、楊端和が攻めて、飛信隊、楽華隊、玉鳳隊がその間に鄴を取るというものになるのかな。

第497話 集結の本意

昌平君達は呼び寄せた信、貂、王賁、蒙恬に鄴攻めを告げる。場所がわからない信に蒙恬は趙王都邯鄲の近くだと教える。河了貂はいきなりの鄴攻めの真意を蒙毅に尋ねるが、河了貂を手で制しただけであった。
蒙毅は真剣な眼差しで盤面を見ていた蒙恬にどう思うか尋ねる。蒙恬は正気の沙汰ではないが面白いと感想を述べる。それは趙西部攻略の道は塞がってきているためであった。蒙恬はその危惧をしている頃にその打開策を咸陽で練られていたことに舌を巻く。
さらに蒙恬は鄴攻めの可否はともかく西部を囮とした鄴を落とし、邯鄲に大手をかける策は李牧をも欺く一手だと熱く気持ちが高まってきていた。
しかし、王賁は鄴自体が邯鄲に次ぐ大都市の上に強力な軍事都市がひしめく王都圏の中にあり、自殺行為だと否定する。
蒙毅は決して自殺行為にはさせなく、練った戦略を信じてほしいと説得する。
王賁はならば趙の目を西部に引きつけ鄴までうまく軍を進めたとして、そこで兵站を分断され退路も絶たれ、邯鄲や他の都市から大軍と鄴に挟み込まれる最悪事態への対処まで練られた作戦があるというのだなと詰め寄ると蒙毅は言葉を失った。王賁は戦略に自信がないから呼び戻したのだろうと吐き捨てる。
昌平君は三人を召喚したのは作戦に自信がないわけではなく、戦略上この三隊の働きが重要になってくるからだと口を開く。
鄴は趙王都邯鄲守備網の中にあり、どう侵入してきた軍を絡め取るかあらゆる仮想戦をやり、対策は練っているものの、相手は李牧であり、見えている戦力以外の隠し手があって然るべきてある、想定外の事態が必ずふりかかるため、現場での瞬間の的確な判断が必要であると語る。そして、その能力を高く養うために三隊は小隊の頃から独立遊軍という特別な権限を与えていたと話す。
自由判断は全体の戦略の意図を理解した上で動く必要があり、そのために咸陽まで呼び寄せたのであった。昌文君は三人はまだ五千人将ではあるが、他の将軍以上の働きを期待していると話す。しかし、介億は期待ではなく絶対条件だと言い切り、それがなくては確実に鄴攻めは失敗すると断言する。
そして、そこに政が現れ、一言付け足させてもらいたいと部屋に入る。王賁と蒙恬は即座に跪くが、政は二人に近づき、跪かず、立って顔を見て聞いてほしいと語る。鄴攻めはこれまでにない重大かつ過酷な戦いとなる、だがあえてこれは中華統一への難関への一つに過ぎなく、これからもさらに三人の力が必要となる、必ずこの戦で大功をあげ、三人揃って将軍へと昇格しろと熱く語る。
河了貂は三人の働きの重要性はわかるが、一番重要なのは総大将であり、総大将は誰なのかと問うと昌平君は総大将はと口を開く。






総大将はやはり本命は騰だと思います。理由としては騰だけが三人と一緒に戦ったことがあるのからです。これだけの苛烈な戦いでは一緒に戦った経験が必要であり、連携が重要だからです。
他の将軍はというと
蒙武…連携なんて関係ない
桓騎…信と喧嘩したばっかり
王翦…王賁と微妙だし、自ら死地には入らなそう
楊端和…言葉もあまり通じない山の民との連携はなかなか難しいでしょう
他の将軍…論外

実際に策を練った昌平君という選択肢もあるかと思いますが、現場経験もそれほどないでしょうし、何より不測の事態が起こった際に全体を見ている咸陽に昌平君がいなくては対処できなくなる可能性があるので、それはやっぱりないかなと思います。

第496話 激動の起こり

始皇十年、黒羊戦に勝利した秦国だが、国内に目を向けると、この年は前年の嫪毐反乱の衝撃から秦国が一歩前に進んだ年とも言える。呂不韋は嫪毐事件と関わり有りと裁かれ、脱官した。また雍に幽閉されていた太后が咸陽の甘泉宮に戻された。
冬は一転して静かに日々が過ぎ、灼熱の始皇十一年の幕があける。

昌平君、昌文君、介億、蒙毅の四人は情報漏れを防ぐために四人で鄴攻略を練っているものの、一つも突破口を見つけることができないでいた。合従軍に攻められた時はギリギリで戦略を立てられたものの、今回は十分に時間を費やしても、策が浮かんでこなかった。介億には鄴攻めは無謀すぎるかと諦めの心が芽生え始めていた。
そこに政が現れ、難解な戦いを挑もうとしているのは分かるが、攻略の策がしっかりと立たぬ限り、鄴攻めの号令はかからないと釘をさす。昌平君はわかっていますと返事をする。介億は蒙毅に一番の問題は何だと考えると問うと蒙毅は兵站であると答える。兵站は軍隊の進軍の道筋、また前線部隊への補給、増援などの道筋のことであった。蒙毅は前線より奥にある鄴まで兵站を繋ぐのにとにかく時間がかかってしまい、趙軍に鄴攻めがかなり手前で悟られ守備軍の動き出しが早まっていると考えを述べた。
昌平君はならば兵站をつなげぬ手で始めるとした。蒙毅は危険すぎると止めるものの、模擬戦でどのくらい危険か探るのだとし、誰にも見えておらぬ道を探すのだ、必ずどこかに答えに辿り着く道の入口があると断言する。

飛信隊では河了貂が年末に昌平君より早めに練兵を仕上げておけという伝令がきたが、その後に伝令が来ないことに疑問を感じていた。河了貂は年明け早々に飛信隊は前線に送られるものだと思っていたためである。
秦東部前線の先では蒙恬が李牧指示の築城の完成度の高さに驚いていた。無理にでも黒羊から討って出て趙の画策を妨害しなくては趙西部はとてつもない膠着状態に陥ると感じていた。そこに昌平君からの伝令が来て、蒙恬のみ咸陽に戻るよう指示が下りる。王賁にも同様の指令が来ていた。また、信と貂にも指令が下りる。
四人が咸陽に揃うとそこに昌平君と昌文君が現れる。




来週、四人に鄴攻略の作戦が発表されるのでしょう。李牧に鄴攻略を悟られないために将軍級を動かすのではなく、若き新星で形成するとは非常にワクワクしますね。しかし、総大将は誰になるのだろうか…ここはぜひ昌平君でお願いしたいところだが、咸陽を離れる訳にはいかないかな

第495話 相応の覚悟

大王が座する宮殿に鳴る鋭き足音。李斯は大王の前に現れ、元呂氏四柱が李斯参上しましたと挨拶をする。宮殿内は突然の出来事に驚き、連れてきた昌文君に文官達は詰め寄る。昌文君は独断で動いたものの、大王の了承は得ていると弁明する。文官達は李斯は呂氏の下で最も暗躍した男であり、大王陣営にも相当の犠牲が出ていることから、許すわけにはいかないと怒号が飛ぶが、李斯は中華統一の話を聞き、統一後に制定される法に着手できるのは中華の中でも李斯か韓非子くらいだと言い放つ。
政は立ち上がり、皆の気持ちは良くわかる、だが統一後の法は統一行為そのものの意義を形として全中華の民に示すものであり、それ程重大な法作りの前にかつての因縁は微々たるものである、政争での恨みを抱いたのはお互い様で、その時期は過ぎた、誠に秦一丸となって立ち向かわなければ中華統一の宿願は形も残らず崩れ去ると力強く説き伏せると、文官達は政の言葉に呼応する。介億は政の判断を英断であり、李斯の力はこれからの秦に必ず必要になると発言する。介億は昌文君によくぞ動いてくれた、同じ呂氏陣営にいた昌平君が李斯を推すと疑心を抱かれるため、何も出来なかったと背景を語る。昌文君は蔡沢の導きだと返した。
李斯は自分の話はこのくらいで、昌平君が珍しく重い問題を抱えている顔をしていると指摘する。昌平君は政に人払いをお願いし、二人きりで相談したいと依頼する。

政と昌平君が二人きりになる。
二人の前には地図が置かれていた。
政は昌平君に他に聞かせられぬ問題とは何だと尋ねると昌平君は来年趙向けて大軍を発するが、李牧が陣頭指揮を執りだした趙西部からの攻略の糸口が全く見えないと状況を語る。
黒羊がその攻略の楔になるはずであったが、李牧は趙西部の広範囲で突然複数の城を築き始め、秦軍の侵攻に備え、何もないところに守りの拠点を出現させ、より複雑な防衛網を築こうとしていた。着工は前線に近い側から進められているが、後方も基礎作りははじまっていた。それは前線守備の戦いをしながら後方に防衛線を作り続けていく戦略だと語る。急造した防衛線の一つ一つは決して強固ではないと予測されるが、秦軍としては次々と生まれる防衛線に対して武力突破を繰り返さねばならなく、長期戦に持ち込まれると話す。政は何年かと聞くと昌平君は十年と返す。
昌平君は李牧も統一戦争は短期間でなければ秦の体力は持たないと気付き、あえて西部の戦いが長引くよう戦略を描いたと推測していた。相手はあの李牧であり、西の攻略は最短で十年、そこからの邯鄲攻めに数年必要となり、正攻法では十五年かけても趙国を滅せるかどうかとなり、六国制覇の夢は露と消えると言い切る。
政はバカなと落胆し、玉座に座り込む。しかし、昌平君の正攻法ではという言葉から、正攻法以外の手があるのかと昌平君に尋ねる。
昌平君は多くの犠牲が伴う奇策中の奇策が一つだけあると言う。政が尋ねると昌平君は語りだす。
趙王都邯鄲は西は太行山脈という自然の盾に守られ、南は第二の大都市鄴が黄河の岸を守るという鉄壁の囲いの中にあり、李牧は今、太行山脈より先にある趙西部の防衛に力を入れている、それは山脈が最後の砦でそこまで敵を近づけたくないからである。しかし、力を入れているということは気を取られているということでもあり、西部攻略を囮にして、南を駆け抜け、一気に邯鄲の喉元である鄴を攻め落とすとした。
鄴と邯鄲は目と鼻の先であり、策として下の下ではあるが、それほどまででなくては李牧は出し抜けないと言う。しかし、鄴を落とすことができればそこから三年で邯鄲を落とし、趙を滅ぼすことができると断言する。政は言葉を失う。昌平君は攻め入る軍は趙軍の包囲攻撃を受けるため、最悪は全滅する可能性もあるとした。




まずは昌平君の練りに練った策の弱点を突き、すぐさま行動に移した李牧はさすがというべきだと思います。それにより、昌平君は危険性の高い奇策を取らざるを得なくなってしまった。もしかしたら李牧は政と昌平君と対談し、その熱い中華への想いから、この奇策まで推測しているかもしれないし、誘い込みをしているとも考えられます。
しかし、これをやらなければ中華統一は不可能なんだよな〜圧倒的不利に加え、相手は中華最強の李牧、、、、
この布陣に戦いを挑むとしたら、やっぱり騰を総大将として、副将を蒙武かな…でもこれだと王騎をとられた戦いと同じで、今回はさらに劣勢となるから、何かダメそう…
王翦はこんな負けが確定に近い戦いで、全滅覚悟ではまともに相手と組み合わなさそうだし、、、
んー難しい…
また楊端和にお願いするか、、、

第494話 地下牢の賢人

夜陰に紛れ、警固されている場所へ昌文君が現れる。そこは咸陽内の某所であり、昌文君は見張りに非公式であるため、他に漏らすなと忠告し、地下の見張りも外に出るように命令する。

昌文君は蔡沢の葬儀を思い出す。国葬並みの規模の葬儀であり、六国全てから弔辞が届いていた。さらに長年出向されていた燕とは同盟の段取りを済ませる働きをしていた。シシは秦のために最後の置き土産をしていった蔡沢は呂氏四柱で長年敵対していたとはいえ、立派な国士であったと口にする。
昌文君は本当に大きな置き土産は斉王との会談であったと感じていた。蔡沢は自らの死期を悟り、何とか事切れる前に強引にでも斉王と大王を引き合わせたのだ。昌文君はそこで政が放った法に民を治めさせるという言葉を思い出す。昌文君はシシに法について秦国内で第一人者であるかと問うとシシは否定し、法の番人の異名は伊達ではないと断言する。それは李斯であり、李斯こそ法の化物であった。

昌文君は檻の前に立つ。李斯は昌文君に何の用だと言い、昌文君は蔡沢が亡くなったことを告げる。李斯は聞いていると返し、用が済んだら失せろ、昌文君が思っているほど暇ではないと冷たくあしらう。昌文君は李斯が書物をしている姿を見て、何をしていると聞くと李斯はもはや呂氏四柱としての立場は消えたため、今は純粋な法家だと返した。
法家は法学書を読み、新しき法の草案を考えるものだと言うと昌文君はその新法を施す日が李斯に来るとでも思っているのかと言う。李斯は自分に来なくても法は成長しながら生き続けると自らの考えを言った。
昌文君は蔡沢は最後に宿題を置いていったと李斯に吐露する。蔡沢は会談の流れを予見しており、昌文君を会談の場に留めたと考えていた。昌文君は李斯に秦は六国を制覇した後、法が支配者となり、全中華を治める法治国家を作り上げると断言する。
李斯はそれを蔡沢が言ったのかと確認すると大王だと言い切る。李斯はそれに驚きを感じる。しかし、昌文君は大王が言うことは大いなる答えであることはわかるが、中華を治める法がどういうものかその片鱗すら見えてこないと苦悩していたのだ。李斯は中華を一国とした法治国家は法家の真髄に触れており、昌文君如きの理解が届くところではないと切り捨てる。昌文君はでは李斯には見えるのかと問うと李斯はぼんやりとだが見えると言い切る。昌文君はそれを教えてほしいと頼むが、李斯は昌文君に教える義理はないと拒否する。昌文君は先ほど純粋な法家だと言っただろうがと縋り付くと李斯は筆を置き、語り始める。
中華を統一できたと仮定し、単純に国民が増えたという認識で法作りに入ると大失敗に終わる、なぜか分かるかと昌文君に尋ねると昌文君は新しく増える国民がそれまで戦ってきた敵国の人間だからだと返すが、李斯は文化形成が違うからだと否定する。六国それぞれに文字、秤、貨幣、思想が違い、特に中原の儒家思想は法よりも上に来るため、法と思想の戦い、法家と儒家の違いが勃発するのであった。李斯は中華を治める法とはバラバラの異文化を持つ六国の人間を一つにするのでなければならぬと断言する。そして、李斯はそもそも法とは何だと昌文君に聞くと昌文君は戸惑いながら、刑罰を持って人を律し治めるものだと答えると李斯は刑罰は手段であって、法の正体ではない、法とは願い、国家がその国民に臨む人間の在り方の理想を形にしたものだと豪語する。統一後、この全中華の人間にどうあってほしいか、どう生きてほしいか、どこに向かってほしいか、それをしっかり思い描け、それができれば自ずと法の形が見えてくる、無論その先が大変なのだが、まずそこからだ、気概を持ってやれと言う。昌文君は李斯の言葉でその実力を理解し、土下座して、李斯に力を貸してほしいと懇請する。蔡沢があの場に昌文君を同席させた理由は昌文君に統一後、李斯の力が必要だと気付かせるためであったのだ。




李斯の法とは願いだという言葉に心動かされました。李斯は李斯で熱い思いを持っているんですね。単なるアタマデッカチではなかったですね。中華統一後は基本的に敵はいなくなるので、軍人ではなく、文官がしっかり活躍する必要があり、李斯はその最たる人物なのですね。

しかし、昌文君の自分のプライドなど簡単に捨て、政の中華統一のため、平和な世界を作るために李斯が必要であれば土下座してお願いできるのはカッコイイと思いました。
昌文君は昌平君、李斯、王騎などに比べて、特段秀でるものはないが、政に心底忠誠を誓い、粉骨砕身で働いているので、改めて最重要人物であることは間違いないと思いました。
飛信隊で言えば渕さんみたいなものかな??

第493話 再出発

弓矢兄弟の兄の仁は中華十弓について語り出す。中華十弓は趙武霊王の時代に全土から弓自慢を呼び集め、腕試しを催し、その時上位十名をそう呼んだのが始まりである。その時優勝した金令は五百歩のところから、十射し、八射的を射抜いたと言われている。そこで、実際に兄弟は五百歩先に的を立て、射抜こうとするが、その的は微かに肉眼で捉えることができる程度であった。兄弟は矢を放つもその矢が当たったかどうかは判断つかなかった。
ちなみに蒼源も十射中八射的に当てていたのである。しかし、魏には十射や九射的を射抜く馬朱離という達人がいたのである。貂は馬朱離は神弓の異名を持つ魏の最強弓兵であり、戦場では百人以上の敵将校の頭を射抜いたと言われていると語り、今は前線を退いているものの、いまだに十弓の上位三人のうちの一人と続ける。信が残り二人はと聞くと、貂は燕の仙手備と趙の青華雲だと返す。
仁は父は魏の馬朱離と戦うために仁と淡を山に残し、戦場へ出て行ったと話す。そして、運悪く麃公軍に入り、すぐ討ち死にしたと聞いていたのだ。しかし、そこに岳雷が割って入り、蒼源が何もせずに死んだのは間違いであり、蒼源は長い期間ではなかったものの、矢で多くの味方の命を救い、多くの敵将校を射殺し、戦を勝利で導いたのだと強く語った。
中でも凄かったのは中華十弓と言われた魏の白公との弓対戦であり、合戦の最中乱戦場を挟んで二人は互いに撃ち合い、六射目で蒼源の矢が白公の右目を射抜き、蒼源は敵味方共に中華十弓の一人だと認められたのである。それから麃公も蒼源を抜擢し、弓魏兵だけで構成された特殊部隊を作らせた。それが凄まじく強く、当時は蒼弓隊の名を聞くだけで敵が震え上がったほどであった。だが、ある戦場で窮地に陥った隊を救いに行った蒼弓隊は敵の大いなる伏兵に遭い敗れ、そこで蒼源も命を落としたのである。岳雷はそこで救われた隊におり、仁と淡にすまないと言い、頭を深く下げる。仁と淡は岳雷に頭を上げるようお願いし、良い話を聞かせてもらったと喜ぶ。そして、ますます戦場に行きたくなったと決意を新たにする。我呂はそもそもなぜ飛信隊に入りたいと思ったのかと問うと仁はたまに町に下りて噂話をよく聞いていたと答える。それは飛信隊とその隊長は飛矢のように真っ直ぐだと。
仁と淡は体力試験には早々と落ちてしまったが、弓にかけて一生懸命戦いますと頭を下げる。信はどうするのか貂に聞くと貂は戦場に出るまでにしっかり体力をつけるようにと合格を言い渡す。
それは信と貂が仁と淡が放った矢は全て的に当たっていたのを確認したからでもあった。

体力試験は河了貂は二百人が通過できれば良いを目論んでいたが、全行程を三百五十人が達成したのであった。そして、羌瘣が受け持った会場と楚水が受け持った会場全て合わせて、身体能力に優れた新戦力一千人が選抜され、飛信隊に入隊したのである。

その全員の前で信は語りだす。あんな苦しい選抜をよく残った、大したもんだと。だが、きついのはこれからであり、練兵、調練でさらに血反吐を吐くことになるが、ここまできたら、絶対にやり遂げて一人前の兵士になりやがれ、なぜならお前らは全員もう大武功をめがけて走り続ける飛信隊なんだからよと言うと新兵の気合が一気に入った。





仁と淡のこれからの活躍が非常に楽しみですね。二人とも腕前としては中華十弓クラスであり、早く諸国に認められる存在になってほしいと思います。他にも根性のありそうな新兵が多く、これから飛信隊がさらに大きくなることを予感させますね。

第492話 成長への募兵

飛信隊の入隊試験では過酷な持久走や根性を試すための試練が行われていた。
その光景は飛信隊の古参隊員ですら、心配するほどであった。
そこに文句を言う輩が現れる。戦場は殺し合いであり、走り回るだけならガキでもできると隊員に詰め寄る。崇原は威勢がいいのが出てきたと前に出て、輩を相手に十人同時に相手にし、傷をつけられれば即入隊を認めると宣言する。輩が襲いかかろうとした瞬間、崇原は片手でその十人を倒した。輩は崇原は飛信隊の中でも屈指の剣使いであることを耳にしており、隊長は崇原よりも強いかと問うと崇原は自分が百人いても勝てないほど隊長は強いと言い聞かせる。
そして、田有は本気で飛信隊で一緒に戦いたいのならもう一度試験に挑めと叫ぶ。

側から見ていた我呂は選抜試験の厳しさに疑問を口にする。貂は本気で隊を進化させるなら土台となる兵の身体能力を高いものにしなくてはならないと考えていた。それは白兵戦では強いと思っていた飛信隊が慶舎隊の精鋭にズタズタにされたからであった。騎兵も歩兵も明らかに個人の力が劣っていたことの証明であった。戦術を前にこの問題を解決しなければさらなる大物と渡り合うのは不可能であると貂は考えていた。
しかし、我呂は試験がここまで厳しいと体力馬鹿しか残らないと指摘する。そこで貂は特殊技能がある者がいるかどうか落選組から探すつもりであると説明する。
信達が歩いていると落選組に少し前に会った弓矢の兄弟がいることを見つける。弓矢兄弟はまた信に会えたことに喜ぶが、落ちたことに気を沈めていた。それは弓の腕前だけで入れると考えていたからである。貂は弓の特殊能力であれば体力試験で落ちている分、弓実技で倍の距離から正確に的を当てられないとダメだと言うと、弓矢兄弟は走っている人の間を縫い、いとも容易く的を射抜く。その距離は倍ではなく、十倍はあったのであった。さらに弟も簡単に射抜く。信と貂はその腕前にただただ驚いていた。貂がその技術をどこで身につけたかと問うと山でと答える。誰に教わったかと聞かれると父であると返す。ただし、彼らの父は戦死していたのであった。弓矢兄弟は理由は麃公という頭のおかしな将軍の軍に入ってしまい、無茶な突撃命令ですぐ死んでしまったと残念がる。
我呂は自分も麃公軍だったと明かし、父親の名前を聞くと蒼源と返す。我呂はその名を聞き、驚く。蒼源は特殊弓騎兵団を作った人物であり、秦で唯一中華十弓に名を連ねた達人であった。





まずはブログのアップが遅れましたこと深くお詫び申し上げます。遅れた理由として完全なる失念でございます。2011年8月に始めたこのブログですが、失念したのは初めてでございます。自分でも驚くと共に今後二度と同じ過ちをしないよう心に誓います。

今週は中華十弓の子供が出てきて面白い展開になってきそうですね。弓隊を作りたいと思っていた飛信隊としては願ったりかなったりですね。将来白麗と弓矢対決とかしたら面白いでしょうね。
しかし、麃公さん、、、、さすがに本能型の極みの人に無茶な特攻をやらされたら誰も生きてはいないでしょうね、、そういう人達がいてこそ麃公の戦績があるのでしょうが、、、何とも考えさせられる回でした。

第491話 秦の障壁

李牧は政を睨みつけ、宮殿を立ち去ろうとする。しかし、昌平君は聞き捨てならない、秦が後悔するとはどういう意味かと李牧に問い質す。
李牧は昌平君に分からんのか、本気で秦が六国制覇に乗り出すというならばこの中華七国で最初に滅ぶ国こそ秦だと言っているのだと豪語する。秦にとって六国制覇とは持久力との戦いであり、中華の中心にある趙を早い段階で滅ぼす必要がある。しかし、李牧がいる限り秦は趙を討つことは叶わぬし、さらに秦軍を内地に誘い込み、徹底的に討ち殺す。趙としてはもはや相殺でも構わない、それは泥沼化すれば楚が北上して咸陽を攻め落とすからである。趙と楚でそのような密約があるわけではないが、媧燐がその好機を見逃すはずがないと断言する。
昌平君は李牧の目の前に立ち、そうなる前にお前を討つと言っているのだと睨みつける。しかし、李牧は誰が私を討つのですと聞き返す。桓騎ですか、蒙武ですか、騰、王翦ですか、笑わせる、そんな目で中華統一をなせると思っているのか秦軍総司令と見下した。さらに李牧は秦本営は秦の抱える将軍たちと李牧との力の差がどれ程開きがあるか分かっておらぬ、今いる秦将全員がまとめてかかってきてもこの李牧の相手ではない、それでもやるというのであればかかってくるがいい、趙は絶対に落ちぬ、この戦いで滅びるのは秦であると言い残し、堂々とその場を立ち去った。

李牧が立ち去ったあとの宮殿では幾ばくかの敗北感があった。臣の一人は李牧をいっそのこと殺して仕舞えばというが、そんなことをすれば秦が勝っても趙は統治できないところになると介億は言う。昌文君は易い挑発に乗るのではない、李牧は早速心理戦を始めたに過ぎないと諌める。介億は李牧の真意を推し量ろうとした時、政は中華統一を語るに王の顔を己の目で確認しに来たのであろうと推測した。

李牧は帰国後、趙の軍事強化に国庫を開きだした。秦もそれを追うように秦も国庫を開き各地の軍事強化に入った。

秦国太近では飛信隊の新兵募集が行われていた。三百人の募集に二千人が集まってきたほど大人気であった。




李牧と昌平君の舌戦は李牧に軍配が上がった感じがしますね。
心理戦の様相はあるにせよ、秦将全員を相手にしても李牧の敵ではないというのはすごい自信だと思います。でもそれをやってのけるのが李牧なので相当警戒が必要かと思います。
秦趙全面戦争は負けた方は本当に国が滅ぶ危険がありますね。趙は韓、魏と連携し、さらに楚を動かすことにより優位に進めていけるような気がするので、秦としては厳しい戦いになる可能性がありますね。

第490話 宿命の舌戦

秦斉対談で思いもよらぬ大収穫をあげたものの、その余韻に浸る間もなく、政は玉座に着き、李牧と相対する。
政と李牧はしばらくお互い目を合わせていた。先に李牧が口を開き、挨拶をしようとすると政はそれを遮り、無用な前置きはいらぬとし、何の目的で自ら咸陽まで乗り込んできたかと問い詰める。その政の礼を欠いた様子に介億は違和感を感じていた。しかし、昌文君はそのくらいでちょうど良いと考えており、黒羊戦終えて間もない敵国王都に宰相自ら乗り込んでくるとは非常識であると感じていた。
李牧は歓迎されていないのは百も承知であるが、間に合う内に政に上奏したことがあって、参上したと説明する。それは中華統一の夢を諦めて頂きたいというものであった。李牧は邯鄲で生まれた不幸をはねのけ、秦の玉座につき、蕞では自ら死地に入り、民兵を奮わせ奇跡を起こした政に心から尊敬していると伝える。そして、政はこの世から戦争を無くすために国を一つにしようと志されている、本当なら政のような王に仕えたかったと言い、しかし、仕えていたのであれば中華統一を全力で止めていたと断言する。それは国の存亡に関わる最終局面に近づく時、その国は想像以上の力を発揮してくる、その力の大きさは合従軍をはねのけた秦が一番理解しているはずであり、その先は血で血を洗う凄惨な戦いが待っているのである。統一後の理想の世などそこで倒れていくものたちの何の慰みのなるのか、流れる血も大量の死も紛れもなく悲劇である。李牧自身も常日頃から戦の根絶を心から願う者であり、他の五国にも同じ考えを持つ者たちがいるはずてあるため、剣を交えるのではなく、手を取り合うべきであると提言するが、昌平君は統一以外に道はないと切り捨てる。
李牧は昌平君に対し、あると反論し、政に今すぐ六国に伝文を送り、王たちを咸陽に集結させてくださいと進言する。政は盟かと聞くと李牧は肯定する。
七国同盟とし、目的は中華の恒久平和であり、守るべき盟約は他国との戦争を一切禁止であり、禁を侵す国があった場合は速やかに残りの六国でその一国を攻め滅ぼすというものであった。この盟の縛りに七王全員が刻印さえすれば無益な血を流さずとも中華から戦はなくなりますと懇請する。
しかし、政はそんなものではなくらならないと豪語する。確かに政と李牧が知恵を出し合い、他の王を説得すればこの中華から戦は消えるであろうが、百年後、政も李牧もいなくなった中華七国がその盟を守っているという保証がどこにある、時の流れとともにいずれかの国が邪な考えを持った時に盟など簡単に砕けてしまう、そんな不完全なものを残して平和を成したというのか、根本を変えるしかないのだと言うと李牧は綺麗な言葉にすりかえればそれですむと思っているのか、理想のためにすりつぶれろという暴論を六国が受け止めると思っているのかと激しく李牧が反論する。政はこの戦で中華全土が悲劇を覆うのは百も承知であるが、それをやる、綺麗事など言うつもりはない、よく聞け李牧と趙の臣達よ、秦は武力を以って趙を含む六国全てを攻め滅ぼし、中華を統一する、お前達は今すぐ発ち帰り、趙王に完全降伏を上奏するがいいと宣戦布告する。
李牧は残念ですがしかと承りました、しかし、最後に後悔するのは秦国ですよと釘をさす。



この舌戦で秦と趙は決裂しましたね。中華統一の最大の障壁となる李牧をどう攻略するか楽しみですね

第489話 蔡沢の矜持

昌文君は王建の実質的な斉の降伏宣言に驚きを隠せないでいた。政がそれを受け入れたことにより、戦わずして六国制覇のうちの一国が成ったのである。
政は蔡沢がこれほど強引に動いて斉王を咸陽まで連れてきた理由がようやく分かったと言い、斉王と蔡沢に感謝の意を表す。
王建は政にあまりぬか喜びをするなとし、ただの口約束であり、秦王の姿勢が変われば斉も大いに牙をむく、それが判明するまで斉は秦の戦いの一切を静観するものだと言う。
しかし、政は三国の後押しをしないというだけで、秦は十万単位の兵の命が救われたことになるとその効果を説いた。
王建はそれに同意し、ならばやはり蔡沢に深く感謝するが良いと話す。
蔡沢は感謝するのは自分の方だと話す。かつて斉王とは違う視点から世を導く道を探す時代があったが、勝手にもはやその道はないものばかりと考えていた。しかし、政は雍にて呂不韋との舌戦の中で光を教えて下さった、その言葉に芯から痺れ、長生きしてよかったと感じていた。しかし、道も光も戦のない世界も実現できねばただの稚児の戯言と同じであり、中華統一実現の最大の障壁は何かお分かりですなと尋ねると政は李牧だと返す。
蔡沢は李牧はと語ろうとすると苦しそうに胸を強く掴む。王建はそれを見て、李牧の目は常に秦に向いており、斉は趙李牧の背を長年見続けていたが、黒羊での敗戦はあるものの、まだ李牧には余裕があり、それを感じ取らせぬようにしているという印象があったと語る。
王建は趙三大天李牧は想定しているよりもはるかに強いぞと忠告する。政は王騎、麃公を討たれ、李牧が化け物であることは承知しており、李牧を倒さねば六国制覇が叶わぬことも重々承知であるが、これから出てくる秦の大将軍達が必ず李牧の首を取ると断言する。
それを聞いた王建はならば本殿にて待っている李牧の元へ行けと言う。あまり待たせると会談の中身の重さを李牧に勘づかれる恐れがあったためであった。
蔡沢は急いでその場を立ち去ろうとする政に対し、にこやかな笑顔でご武運をと送り出す。
政と昌文君が立ち去った後、王建は何とかもったな蔡沢と語りかける。王建は蔡沢の言う通り千年に一人の王であり、政の中華統一の可能性を感じていた。
しかし、蔡沢からは何の返事もなかった。蔡沢はその場で息を引き取っていたのである。
史記によれば蔡沢は燕の人で身一つで遊説し、秦にたどり着き、当時の絶対権力者丞相范雎との舌戦によりその席を譲り受ける。以後、昭王、孝文王、荘襄王、嬴政と四代の王に仕え、その間祖国燕にても重職についた稀有な政治家であった。



まずは来週キングダム休載ですのでご注意下さい。
蔡沢は外交における最大の功績を残しましたね。王建の性格を見抜き、政と引き合わせることにより、一国を無傷で降伏させた。蔡沢も外交における傑物であることは間違いないですね。
さて、ここからは李牧との会談ですが、政が中華統一への真意を話すのかどうか…やはり警戒されないためにも話さないでおく方が良い気がしますが、李牧には見抜かれちゃうのだろうな〜

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