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第489話 蔡沢の矜持

昌文君は王建の実質的な斉の降伏宣言に驚きを隠せないでいた。政がそれを受け入れたことにより、戦わずして六国制覇のうちの一国が成ったのである。
政は蔡沢がこれほど強引に動いて斉王を咸陽まで連れてきた理由がようやく分かったと言い、斉王と蔡沢に感謝の意を表す。
王建は政にあまりぬか喜びをするなとし、ただの口約束であり、秦王の姿勢が変われば斉も大いに牙をむく、それが判明するまで斉は秦の戦いの一切を静観するものだと言う。
しかし、政は三国の後押しをしないというだけで、秦は十万単位の兵の命が救われたことになるとその効果を説いた。
王建はそれに同意し、ならばやはり蔡沢に深く感謝するが良いと話す。
蔡沢は感謝するのは自分の方だと話す。かつて斉王とは違う視点から世を導く道を探す時代があったが、勝手にもはやその道はないものばかりと考えていた。しかし、政は雍にて呂不韋との舌戦の中で光を教えて下さった、その言葉に芯から痺れ、長生きしてよかったと感じていた。しかし、道も光も戦のない世界も実現できねばただの稚児の戯言と同じであり、中華統一実現の最大の障壁は何かお分かりですなと尋ねると政は李牧だと返す。
蔡沢は李牧はと語ろうとすると苦しそうに胸を強く掴む。王建はそれを見て、李牧の目は常に秦に向いており、斉は趙李牧の背を長年見続けていたが、黒羊での敗戦はあるものの、まだ李牧には余裕があり、それを感じ取らせぬようにしているという印象があったと語る。
王建は趙三大天李牧は想定しているよりもはるかに強いぞと忠告する。政は王騎、麃公を討たれ、李牧が化け物であることは承知しており、李牧を倒さねば六国制覇が叶わぬことも重々承知であるが、これから出てくる秦の大将軍達が必ず李牧の首を取ると断言する。
それを聞いた王建はならば本殿にて待っている李牧の元へ行けと言う。あまり待たせると会談の中身の重さを李牧に勘づかれる恐れがあったためであった。
蔡沢は急いでその場を立ち去ろうとする政に対し、にこやかな笑顔でご武運をと送り出す。
政と昌文君が立ち去った後、王建は何とかもったな蔡沢と語りかける。王建は蔡沢の言う通り千年に一人の王であり、政の中華統一の可能性を感じていた。
しかし、蔡沢からは何の返事もなかった。蔡沢はその場で息を引き取っていたのである。
史記によれば蔡沢は燕の人で身一つで遊説し、秦にたどり着き、当時の絶対権力者丞相范雎との舌戦によりその席を譲り受ける。以後、昭王、孝文王、荘襄王、嬴政と四代の王に仕え、その間祖国燕にても重職についた稀有な政治家であった。



まずは来週キングダム休載ですのでご注意下さい。
蔡沢は外交における最大の功績を残しましたね。王建の性格を見抜き、政と引き合わせることにより、一国を無傷で降伏させた。蔡沢も外交における傑物であることは間違いないですね。
さて、ここからは李牧との会談ですが、政が中華統一への真意を話すのかどうか…やはり警戒されないためにも話さないでおく方が良い気がしますが、李牧には見抜かれちゃうのだろうな〜

第488話 秦王の絵図

中華統一を汚濁の極みと評した斉王。それに対し政は亡国の民の苦しみを救う答えがあると断言する。王建はその一言に興味を持ち、政にその考えの詳細を問う。
政は口を開く。国とは人の根付く大地であり、それを奪われた時そこにあった人間に残るのは耐え難い屈辱感と喪失感と恐怖である。中華統一の時、滅ぼす側の王として、旧六国の民達からそれらを取り除く責任があることは重々承知していており、これが征服戦争ではないこと説いて理解してもらう必要があると語る。
王建はこれは異なことをと言い、六国制覇は征服戦争そのものではないかと指摘すると政は新国建国の戦争だと言い切る。征服とは支配であるが、六国を滅ぼし、その全てを西端の秦が一手に支配できるはずもなく、それを試みれば瞬く間に中華は再び混沌の世になる。しかし、秦が支配者とならなければ亡国の民の恐怖心はぬぐえ、新しい国の形を伝えれば国境なく争乱は消え、人と物が自由に動き混ざり合う世界をとまで政が言うと、王建は空論だと吐き捨てる。支配なくしてこの中華七国を一国になどできるわけがないと否定する。それはこれまで多種多様な文化、風習、信仰が複雑に分かれる中華全人民を同じ方向に向かせるなど逆にこれまでにない強烈な支配力を持つものが上に立たねば実現不可能だと言い切る。
政はその通りであり、中華統一の成功は全中華の民を一手に実効支配するものにかかっており、それは人ではなく法であるべきだと説く。法に最大限の力を持たせ、法に民を治めさせる。法の下には元斉人も秦人も関係なく、王侯貴族、百姓も関係なく、皆平等とし、中華統一の後に出現する超大国は平和と平等の法治国家だと豪語する。
政の言葉に辺りは静まり返り、昌文君は涙を流し、蔡沢は胸に熱いものを感じていた。

王建は王侯すら法の下ではもはや王国とも言えぬぞと指摘すると政は小事だと返す。
王建はつくづく常識を覆しよると呟き、東西南北平等の法治国家という考えは大雑把だが回答として悪くなく、容易いことではないが、目指す場所は我々の民が惑い苦しむところではなさそうであり、そんな道があったのかと感心する。蔡沢の口車に乗り、はるばる西の端まで足を運んだ甲斐があったようだなと言う。
政は今度は王建が答える番だと言い、何のために咸陽まで来たのかと問う。斉秦同盟かと考えたが、それでは斉の利はほとんどないはずであった。秦が魏、趙、韓と戦う時その背後にある斉が三国に味方せぬというだけで秦はこれ以上ない同盟の利を得るが、秦の刃が三国を貫いた時、次は斉に突き刺さり、それを同盟の効力で止められぬことは明白であると言う。王建はその時、秦王の目の色が今と変わって汚く濁っていたならば斉も死力を尽くして国を守るだけだと返す。
王建はおよそ五十年前に楽毅の合従軍を受けて、斉国は莒と即墨の二城のみとなり、その時に籠城中の莒で生まれ、多くを見ながら、今に至っていた。中華はもううんざりするほど血を流しており、泥沼からの出口が見つからぬまま、これからもずっと血を流すのかと思っていたが、政の言葉を聞き、出口の光を見つかけたかもしれぬ、政にならこの中華全土の舵取りを任せても良いと口にする。政をそれを聞き、席を立ち、王建に拝手する。




なんということでしょう。一つの城を獲るのに多くの血を流してましたが、政の確固たる中華の想いは血を流さず一国を手に入れることができた。しかも、斉は戦略上秦にとって多大なる恩恵をもたらすことができるため、これから秦の中華統一は加速するものでしょう。
この会談を作った蔡沢も見事ながら、急ではあるものの、その期待に応えた政もやはり偉人ですね。今回は外交の力の凄さを見せつけられた一件だと思いました。

第487話 東西大王会談

突如咸陽に現れた王建王。急転直下の大王同士の会談に向け、文官たちに焦りが走っていた。
昌文君は斉王との会談の内容は不明であるため、主要人の少数だけで本殿ではなく、人目につかない方紀殿で密かに執り行おうとしていた。昌文君は政と昌平君と介億を連れ、方紀殿に向かって、走っていた。李牧は本殿に待たせており、そちらで謁見させる予定としていた。大国の王が突然咸陽に来るなど前代未聞であり、本来であれば国をあげて迎えばならない程であったが、斉王の長居せぬ故、すぐに場を設けよという注文により、大急ぎで準備に取り掛かっていた。

方紀殿に向かう途中に王建と蔡沢と遭遇する。王建は突如遭遇した踊り場に会食の場を設けるよう仕向け、食べながら、会談すると提案する。昌文君は大国の王二人の会談がこんな踊り場ではと止めに入るが、王建は密室でただ話すのであればわざわざ秦まで足は運ばず、秦という国と王を感じに来たと話す。
政は王建の提案に同意する。しかし、王建は席は三席しかなく、王建と政と蔡沢のみであとは外すようにと指示する。蔡沢は自分は橋渡し役故、近くで見守るとし、残り一席は丞相にと身を引く。王建は丞相は二人いるようだがと尋ねると蔡沢は悪いが退がってくれるか昌平君と話し、昌平君はそれに同意し、介億を連れてその場を離れる。昌文君は蔡沢が自分を指名したことに疑問を感じながらも席に着く。王建は給仕達全員も下げさせ、会談が始まる。

王建は第八代斉王王建であると言うと昌文君はその大きさに圧倒される。それに対して、政は第三十一代秦王嬴政であると返すと、その場に熱風が巻き起こる。
王建は綺麗な顔の割に猛々しいと評価し、本題に入ろうとすると政はそれを止め、席を立ち上がり、四年前の合従軍の折、斉が合従軍より抜けたことで、秦が救われたと秦王として改めて礼を言うと頭を下げる。
王建はそれを聞き、秦を助けたいと思ったのではなく、合従軍が秦国を滅ぼして、その土地と人間を六国で取り合った後の世が見るに堪えぬ汚濁になると思ったからだと自らの考えを話した。しかし、あろうことかそこで救われた秦が今度は六国を滅ぼし、全てを手に入れて、それ以上の汚濁を示そうとしていると続ける。政は中華統一を汚濁と断ずるならば断固それを否定すると反論する。王建は否定してみせろと言い、さらに蔡沢から中華統一の話を聞いた時、李牧と結び、第二の合従軍を興し、次こそ秦国を滅してしまおうと考えたと話す。王建はしかし、蔡沢から続けて人が人を殺さなくてすむ世界がくると秦王は言っていると聞いており、それに相違はないかと確認すると政は勿論だとだけ返す。
王建は空論だと吐き捨てると政はすかさず違うと否定する。王建は政の理想の世を聞いた時に蔡沢同様胸に来るものがあったが、六国征服と人を殺さぬ世の間にはとてもなく重い現実が抜け落ちていると指摘する。それは国を滅ぼされ、その日より仇敵国の人間に、強制的に秦人にならされる六国の人間達の苦しみであった。王建はその前に第二の合従軍で秦を滅ぼさねばならぬぞと脅す。しかし、政はそう焦るな、答えはあると断言する。



昌平君ではなく、昌文君である理由は今後明らかにされそうですが、裏の理由としては間違いなく、リアクションの大きさではないかとちょっと思いました…
王建が言うことは間違いないのですが、政がどう反論するのか楽しみです

第486話 文官達の戦い

咸陽では文官達が激論を交わしていた。
趙だけでなく、魏や楚も大軍を秦に向けていることもあり、再度合従軍が興る危険性を危惧していた。
しかし、昌平君は合従軍は興らないと断言する。四年前の合従軍は二十年間楚の宰相を務めた春申君の名の信頼と王騎、劇辛を討った李牧の名の信頼の二つが重なって興りえたものであり、すでに春申君は死去し、李牧も先の失敗の汚名返上ができていない現実と、それ以外で大掛かりな絵を描ける人物はいないからであった。さらに昌平君は自ら二度とあんなものは作らせないと豪語した。介億は国間のつながりを妨害する遊説の徒を国外に多くはなっていると発言した。
しかし、昌平君は見当たらぬといったものの、東に鎮座する人物だけは力が未知数であり、危険性を感じていたが、それは口には出さなかった。
政はそれを聞き、ならば次に刃を交える国はと問うと昌平君は趙国ですと返答する。昌平君は黒羊という楔を活かし、次が本当のとまで言うと、いきなり伝令が宮殿に入ってきて、急報を告げる。
それは蔡沢から国運に関わる知らせが伝えられる。

黒羊での引き継ぎを終え、信は蒙恬に後を任せ、出発しようとする。しかし、そこに咸陽本営からの急報が入る。
それは趙との一時休戦というものであった。伝令は理由も特に知らすこともなく、相当慌てながら各隊を回っていた。その様子を見て、蒙恬は昌平君に突発的な想定外の出来事が起きたと推測した。

そして、数日後、咸陽にものものしい警備の中、国籍不明の一旅団が到着したのであった。得体の知れない車からは予想外の人物が姿を表す。その姿は王建王と李牧と蔡沢がであったのだ。
蔡沢は一人本営に赴くと文官に囲まれ、李牧と王建王を連れてきた理由を詰問される。蔡沢は独断で動いたことを詫びるものの、段取りを踏んでいては危険度が増し、実現困難であるからだと釈明する。昌平君はなぜあの二人を連れてきたのかと問うと蔡沢は一人であると返す。
政は斉王かと言うと蔡沢はいかにもと返答し、斉王が咸陽まで来るには趙国を通らねばならず、その旨を趙に伝えたところ、無事に通す条件として、金とは別に李牧も同行し、秦王との謁見する機会をと言われたため、可として連れてきたと白状する。
周りの文官からは王をないがしろにし、大逆罪だと怒りを買うが、蔡沢はかつて東帝、西帝と中華に恐れられた時代もあった東の斉王と西の秦王が直接会って対話する意味を考えると自分の細首程度喜んで差し出すと言い切る。
蔡沢は政に最後の仕事として、列国を滅ぼさんとする王とそれを東の玉座で受けて立つであろう斉王と舌鋒をお交わし下さいと懇請する。




蔡沢の思惑はなかなか粋なものだと感じました。蔡沢は政と呂不韋の舌戦から政の中華統一の意志に心動かされたのでしょう。蔡沢は自身の年齢を考慮し、中華統一の最後まで見ることができないため、最後の敵となりうる王建王との舌戦を実際の戦いに見立てて、行く末を思うのかなと推測します。
しかし、蔡沢の言う通り、これを順序立ててやったら絶対に実現しないでしょうね。そもそも秦が中華統一を狙っていることは周知の事実ではあるものの、それを秦王が他国の王に語るとなると重みが遥かに増し、警戒される危険性が増すからであります。しかも、今回は李牧も来ちゃってますし…間違いなく蕞での一件が本当に政の力であったのかどうかを見極め、今後の対策を考案するためだと思われます。

第485話 蒙恬の報せ

着々と砦化の進む黒羊の丘。膨大な仕事を引き受ける飛信隊の下に楽華隊が現れる。
信は蒙恬を迎え、酒を用意する。
蒙恬は慶舎を討って最大武功をあげて、同士討ちの禁を犯して武功帳消しになった信に乾杯と皮肉を言う。そして、蒙恬は慶舎討ちの報せを聞いて、完全に信が将軍になったと思い、驚いたと感想を述べた。内輪揉めで昇格が消えたが、愚直さが揺るがないのは流石だと感じていた。
信は何の用で来たのかと蒙恬に尋ねる。
蒙恬は現場の引き継ぎだとし、飛信隊の持ち場は全て楽華隊が引き取ることとなった。渕さんは砦はまだ完成してないと危惧するものの、蒙恬はしっかり仕上げると言い、これは総司令の温情であり、隊にとって休むことも大切なことだと諭す。
信は休みはいらないと反発するが、飛信隊の隊員は疲れていると信に文句を口にする。蒙恬は桓騎と揉めて思うところがあるだろうから、一度家に帰って、しっかり休んで気分転換でもしろと話す。
信は気分転換ですることもないと言うと蒙恬はお見合いを勧める。信は驚き焦るが、黒羊を取られて趙がこのまま黙っている訳はなく、前線を離れるわけにはいかないと固辞した。
蒙恬は秦軍が黒羊を取ってから秦国に牙をむこうしているのは趙だけでなく、楚、魏、韓、斉、燕全てが中華の均衡を崩そうとしている秦に対して、水面下で謀を進めており、次の戦はかなり大きくなると推測していた。
信はだったらなおさらと言うと蒙恬は否定し、だから今休むんだ言い、次が大戦なら敵国も秦もそれなりの準備期間に入るため、今しっかり休んで傷付いた飛信隊の回復と進化をはかれとの昌平君の意図であった。
河了貂は黒羊戦を通して、飛信隊は攻めはともかく守備力は決して高くなく、それは戦が大きく長くなると致命傷であり、羌瘣隊との連携、弓隊の配備等やるべきとことはたくさんあり、時間をかけて練ればまだまだ飛信隊は強くなると断言する。
蒙恬は霊凰、慶舎という大物食いをしている飛信隊の本営からかかる期待はもはや小さくないと言うと信は納得し、帰還することを了承する。

蒙恬は今から大変になるのは文官であり、次が大戦になるのであればそれまでの準備が戦の勝敗を大きく左右させるため、軍略補強、整備、表、裏の外交の仕掛けなどであると語る。

蒙恬の言葉通り、この時すでに列国の計略、謀略の手が水面下で複雑にうごめいた。秦から東、遠く離れた趙と斉の国境付近「香」という小さな城邑では咸陽の目を盗んで全く予想外の三人の大物が密談の席につこうとしていた。そこには蔡沢、李牧と斉の王建王がいた。





久しぶりの蒙恬登場にファンとしては非常に喜んでおりますが、地味な登場だし、今週のみだと思われるので、ちょっと残念です。次の大戦で活躍することを期待してます。
蔡沢の目論見が読めず、不安を感じております。蔡沢は呂不韋派閥だったので、現政権では不遇の扱いになっているだろうから、面白くないのでしょう。そのため、李牧、王建王と結託して、秦を滅ぼす算段をするのではないかと思います。たぶん斉は蔡沢との約束の秦領土を貰うというのが果たされていないでしょうから、乗ってくるのでしょう。
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第484話 それぞれの出発

信は河了貂と那貴の桓騎の分析を聞いて、一体何者なんだと問う。那貴は桓騎は謎の多い人だと言い、なぜあれほど強いのか、家族はいるのか、どこから来たのかなど雷土ら幹部でさえ知らないと話す。しかし、過去に一度だけ最古参の者から桓騎の根っ子の部分について聞いたことがあった。最古参の砂鬼一家は桓騎の根にあるのは岩をも動かす怒りであり、それは全てに対してであると語っていた。

咸陽に朗報が入る。
伝令は秦軍が黒羊戦に勝利し、敵将慶舎を飛信隊の信が自ら討ち取ったと伝える。昌文君は信が慶舎を討ち取ったことに驚き、目を丸くし、声が出ない状況になった。
しかし、伝令はその後、桓騎と信が内輪揉めをし、死人が出たという報告が入る。しかし、それも沈着したと報告される。
介億は戦の内容は不明であるが、黒羊を五日で勝利するのはさすが桓騎であると評価する。昌平君は桓騎が自分の予測を上回る戦いをしたと想像したが、黄龍と介億に黒羊を拠点化させる指示を出し、黒羊の先の趙領土へと意識を向かわせていた。

黒羊では摩論と河了貂が口論していた。それは西の丘一つを飛信隊だけで砦化しろというものであった。さらに黒羊の外側の警邏隊の指示も出ており、貂は冗談じゃないと反発するが、摩論は八千の内五千はいると指摘する。しかし、貂は重傷者ばかりであり、慶舎本隊の奇襲を受けた時にボロボロになったと返す。
そこに雷土が現れ、それはてめぇらがアホだからだろうが、お頭みたいに頭を使って戦わないから死傷者を出すんだと切り捨てる。
貂が雷土に反論しようとするが、信はもういいと貂を止めて、了解する。信は桓騎は顔も出さないで何をしているかと問うと雷土は何でてめぇごときにいちいち顔を見せなきゃいけないんだと睨み付け、てめぇなんぞお頭の眼中にはこれから先も一生入らねえんだよと吐き捨て去る。

信は丘の上で物想いに耽る。そこに羌瘣が現れ、大人の戦い方を見せつけられたなと話し出す。信は戦い方はクソだが、桓騎とはまだこの先も戦場を一緒にする機会があるだろうから、結果は真正面から受け止めなければいけないと感じていた。
羌瘣は桓騎が強かろうと制止すべきところは制止すべきだと話し、信はそれに同意し、そのために桓騎より先に大将軍になり、上に行く必要があると決意する。羌瘣は先は難しいなと言うが、信のやり方で大将軍になればいいんだと諭す。それを聞き、信は桓騎に負けないことを心に誓った。
一方、飛信隊は大将桓騎への反逆行為の咎により、慶舎討ち取りの戦果は相殺とされた。しかし、その際に信の想いを皆が聞いたことで、隊の結束はより強くなった。

桓騎本陣では怒号が飛んでいた。それは那貴が飛信隊に移ると桓騎に伝えたからであった。雷土はそれに怒り、内臓ぶちまけられてぇのかと手にもっていた器を粉々にした。
那貴はそう熱くなるなと言い、桓騎軍は軍であって、軍ではなく、堅苦しい縛りがないところが桓騎軍の良いところであるので、問題ないですよねと桓騎に確認する。
桓騎は那貴に理由だけ教えろと言う。那貴はただのいつもの気まぐれですよと返し、強いてあげるなら飛信隊で食う飯は意外と美味いからと語る。

これらの出来事はこれから上に進む飛信隊にとっては大きな収穫であった。そして、また黒羊戦を樹海にひそみ別の収穫を得た新たな存在もいた。それは李牧であった。
李牧は今回の敗戦は桓騎の力を見誤った自分の責任だと言う。副官舜水樹は慶舎の損失は痛いが、その代わりに得たものが二つあると語る。それは隠れた名将紀彗の発見と桓騎の弱点であった。
黒羊戦の翌年秦は合従軍戦以来の超大軍を興して趙軍と激突する。その時、黒羊がその前哨戦であったことに気づく。




まずは信の慶舎獲りが内輪揉めと相殺になったことは残念です。今回の戦いで信は将軍になると思っていたので…
ま、でも飛信隊のさらなる結束と那貴が加わったことは非常に隊としても大きな収穫だと思います。特に那貴は今までの飛信隊にはなかなかいない頭の切れるタイプだと思うので、貴重だと思います。
翌年は秦対趙の一大決戦ですね。秦は趙を滅ぼしにかかり、趙は李牧を中心として、防衛を図るのでしょう。しかし、桓騎の弱点が李牧にバレてしまっているため、厳しい戦いになりそうですね。
大将は騰がいいな〜、、、いや、今回の勝利で桓騎が大将軍になって、桓騎が大将になるのか???

第483話 勝敗の夜ふけ

時は黒羊戦の五日目の午後に遡る。飛信隊は丘の麓で兵を待機させていた。桓騎からは丘を占拠した趙軍が桓騎軍を追って降りるので、その間に丘を奪取するよう命令が下っていた。
信はそんなにことが上手くいくかと反発していたが、眼前に紀彗が丘を駆け下りていく様を見て、唖然とする。この時、丘を占拠していた趙軍のおよそ半分を占める紀彗軍が下へ降り、丘を後にした。一方金毛、岳嬰率いる慶舎軍は丘に留まり、徹底抗戦の構えを示す。それに対し、樹海内に伏していた桓騎兵が続々と丘に攻め上がったのだ。
序盤高低差と砦を盾に趙軍が大いにこれを返り討ったが、最終的には砦を突破したゼノウ一家と飛信隊の前に敗れ去ったのである。

信は趙軍が続々と丘から降りていくのを目にする。岳嬰は最期まで戦うことを宣言するが、金毛はここで死ねば負け犬で終わるだけであり、慶舎の仇を取るためにもここで退くべきだと説得する。
そして、金毛は黒羊からの完全撤退を決め、秦軍の完全勝利となった。

一方、桓騎は紀彗軍が丘を降りて追ってきたことを確認すると十分引きつけて、そこから戦わずに分散し、四方へ逃走した。紀彗は分裂したいくつかの桓騎軍の小隊を討ち、そのまま離眼城へ入った。
そして、桓騎は再び黒羊に戻り、すでに桓騎軍が占拠した中央丘にゆっくりと登頂したのである。


河了貂は那貴と戦の全容を解明していた。黒羊戦四日目、飛信隊が慶舎を討とうとしていた頃、桓騎はすでに標的を慶舎から紀彗に移しており、特別拷問をしていた離眼兵から紀彗の過去をすべて聞き出していた。そして、紀彗と離眼の関係を知った桓騎は丘取り合戦を止めて、趙軍に明け渡す。
趙軍に丘の砦を進めさせる一方で、黒羊の村焼きを行い、一般人の死体を集め、死体を紀彗に見せて、離眼を同じ目に合わせるぞと脅した。その結果、紀彗は丘を捨て、離眼救出に向かい、趙軍は破れたのである。
戦争四日目で大局も動き、どう丘を攻略するか軍略家なら前のめりになるところで、桓騎は丘ではなく、紀彗一人を的にして、戦いを切り替えたのである。そして、村人達の死体を必殺の武器として、紀彗の弱点をえぐり、丘から引きずり降ろして、黒羊戦を勝利に導いた。
河了貂は全容を明らかにしたところで、こんな勝ち方は昌平君でも李牧でも真似はできないとし、紀彗が離眼のために戦を放棄するかは賭けであり、戦は遊びではないと怒り、戸惑う。
那貴はだが真似できない分、圧勝劇も桓騎ならではとは話す。丘は獲ってからの砦化も難題であっが、桓騎は趙軍にそれをやらせて、完成に近い形で手に入れたのだ。そして、消耗戦になるはずの丘取り合戦を止めたお陰で、戦死者の数は開戦前の予想の半分以下であったのだ。





桓騎の恐ろしさを改めて感じた一戦でしたね。被害を最小限に抑え、砦化の仕事は敵にやらせる。
しかし、飛信隊が慶舎を討ち取ってなかったらと考えても、兵の半分がいなくなってしまったら、いくら慶舎でも丘を守りきれなかったのだろうとも思います。
黒羊を手に入れた秦はこれからどう軍略を描くのか、気になりますね。

第482話 離眼と趙国

桓騎は紀彗の弱点を抉り、趙軍を混乱に落とす選択を迫る。紀彗は金毛に対して、丘を捨てると宣言する。金毛は紀彗に対して丘の占拠こそ戦の勝利であり、自らそれを捨てるというのはあり得ないと諭す。しかし、紀彗は離眼を助けに行かなければならないと自らの意志を曲げるつもりなかった。
金毛は桓騎軍が離眼を落としたとしても飛び地のため、趙軍に包囲され滅するだけだとし、明らかに紀彗を誘い出す罠であり、紀彗軍が去った後に丘を攻め上がる兵が隠されていると説得する。
馬呈はそんなことは紀彗も当然わかっているが、それでも追わないと必ず腹いせに離眼を血の海にすると焦る。
金毛はせめて二日待てば砦が完成し、慶舎軍だけで丘を守れると譲歩する。
しかし、紀彗は今の離眼は桓騎軍を相手に半日も持たないと受け入れなかった。
そこに岳嬰が割って入る。
岳嬰はそんな身勝手は通用するわけがなく、どうしても行くのであれば殺してでも紀彗らを丘に留めると刃の先を向ける。馬呈は岳嬰の矛に自分の斧を乗せ、その前に自分が岳嬰を倒すと怒りを露わにする。
金毛はもしこの場で紀彗を殺せば全離眼兵は決死隊となって、慶舎軍に襲いかかり、それが趙軍の選択の中で最悪の道だと叫び、今我々はこの戦いの勝ちか負けの究極の選択を桓騎から突きつけられており、その判断を下すのは趙軍の実質的総大将である紀彗だと睨みつける。
金毛はさらに続ける。
最後に中央の武将として離眼城城主紀彗に言っておくことがある。それは慶舎軍は離眼のためでなく、趙国を守るために黒羊に戦いに来たのだ。黒羊を失えばここを拠点に周囲一帯が秦軍の侵略を受けるだろう、離眼はその中の一城に過ぎず、実際にそうなった時の趙人の血がどれほど流れるか予測すら立たぬ、そして一帯が秦の領土と化した時、言うまでもなくさらに奥深くまで次の侵略を受けることになるため、そうさせぬための黒羊戦であったのだ。それを防ぐために皆は戦いの血を流し、死んでいったのである。離眼一城を救いに行くというのであれば、その全てを無に帰すことになり、離眼一城のために趙国西部一帯が失われる可能性がある。それほど重い選択なのだ、よく考えて決断しろ紀彗と言葉を浴びせる。
紀彗は金毛の言葉に何一つ返事ができないでいた。


離眼城の城壁にいる兵士は遠くに物凄い数の兵士を確認する。鐘を鳴らし、男は全員城壁に登らせ、女子供を地下道へ避難させる。桓騎が来たと焦るが、実際に来たのは紀彗であった。
そして、紀彗は離眼を離れる準備を始める。




金毛の言うことは最もであり、何一つ間違っていなかったが、やはり紀彗も人であり、頭では行ってはならないと分かっていても、止めることはできなかったのでしょう。
しかし、そう考えるとみんな桓騎の掌の上でクリクリ踊っているだけですね…
桓騎、ホント恐るべし…

第481話 苛烈な贈物

飛信隊に平穏が戻る中、桓騎の伝令より最終指令が下る。信は伝令より今日で戦が終わると本当に桓騎が言ったのか驚きを隠さず確認すると伝令は確かにそう言ったと返す。

趙軍は中央の丘の要塞化を終えていた。しかし、そこにいた物見はある異変に気付き、紀彗の元に駆け寄る。急いで麓まで来てほしいと。馬呈は敵襲かと確認すると伝令は敵襲ではなく、桓騎からの贈物と伝文だと返事する。
紀彗と馬呈が麓まで下りると砦の外まで出て行くとこになった。
そこで紀彗は衝撃的なものを目にする。
そこにはアーチ状のものが設置されていた。そこには何百もの黒羊の民の女、子供達が惨殺されて、アーチ状に括り付けられていた。
それを見た紀彗は怒りに震える。
そして、部下より桓騎からの伝文を聞く。敬愛なる名将紀彗殿へ、副将ながら獅子奮迅の活躍お見事、その紀彗殿を称えて、この骸の巨像を贈る、じっくりと見て、目に焼きつけろ、いいか紀彗、これ以上の惨劇をお前の離眼城で起こしてやる故楽しみにしていろという内容であった。それを聞き、紀彗は烈火の如く怒りが湧き上がる。

そこに急報が入る。
それは桓騎軍は離眼城に向かって移動し始めたことを伝えるものであった。




間違いなく紀彗は中央丘を捨てて、桓騎軍を追いかけるでしょう。軍本来の目的は民を守ることなので、自分の城の民を見捨てて、黒羊戦に勝つという選択肢はないでしょう。金毛は残るかもしれないですが、、、、
桓騎は紀彗が追ってくることはわかっているので、各所に伏兵をしたり、対策はしっかりしているでしょう。背を取られても来るとわかっていれば、大して怖いものではないですからね。さらに飛信隊と挟み撃ちにすれば紀彗軍は壊滅となるでしょう。
残された金毛は自分達の兵だけでは中央丘を守ることはできないため、撤退しようとするが、そこも桓騎軍に絡め取られそうですね。
そして、守る軍がいなくなった離眼城は桓騎の魔の手に堕ちるのか…

第480話 尾平と飛信隊

飛信隊と信への熱くみなぎる気持ちを桓騎にぶつけた尾平。しかし、返り討ちに遭い、馬乗りにされ、顔面に拳を何発も叩き込まれて、意識が飛んでいた。
そこに那貴が現れ、桓騎兵を止める。しかし、桓騎兵はてめぇには関係ないと続けようとするが、那貴は自分が声掛けをして、尾平を桓騎軍に送り込んだため、関係あると返す。それに怒りを感じた桓騎兵は雷土一家の自分にケンカを売ったら、那貴のような小さい組はとまでいうと那貴は桓騎兵の首に膝掛けを食らわせ、首の骨を折り殺したのであった。那貴は一家をバカにしたのが悪いと言い、おれがキレたら雷土より怖いと脅し、桓騎兵を退散させた。

飛信隊の陣では田有が羌瘣に手当を受けていた。羌瘣は桓騎を少し甘く見ていて、危うく田有を死なせるところだったと反省する。田有は尾平が乱入してきて結果的に命拾いしたなと呟き、さっき尾平が帰ってきたと騒いでいたなと言うと羌瘣は桓騎兵に暴行された瀕死の尾平を那貴が運んできて、今信が尾平についていると教える。
それを聞いた田有はどっと疲れたな羌瘣と口にする。羌瘣はそれに同意する。


尾平は意識を取り戻す。そして、傍に信がいることを確認する。
信は語り始める。実は昔戦地で一般人の家に入って盗み食いをしたことがある。ちょうど三百人将になったくらいの頃、一回無茶して隊が散り散りになり、皆が集まるまで一週間以上かかった。信は一人で深手を負い、食い物もなく、倒れそうだった時に茂みの中に民家を見つけたのであった。その住人は戦が始まることを察知し、慌てて逃げたようで作りかけの料理がそのままになって、腐りかけていたが、信は上がり込んでそれを全部平らげたのであった。意識は朦朧としたが半分腐ったその食物がとんでもなく美味かったのを覚えていた。
そして、その半年後にまた似たような状況になったのだ。住人は逃げ出して作った料理はまだ綺麗なものであったが、飢えで倒れそうではなかったというのが、前回と異なる点であった。しかし、腹は非常に減っていたので、また食べたが、その味はクソみてえな味がしたのであった。その時信はそうだよなと納得したのだ。子供の頃光り輝くものであり、ヒョウと思い描いた天下の大将軍の姿は陵辱や虐殺などはなかった。信はその時にヒョウと夢見た天下の大将軍の姿は今でも色あせる気は全くしなかった。もし、桓騎みたいなやり方で勝ち続けてもヒョウは喜ばないし、信も何も嬉しくない。ガキみたいなことを言っているのは十分理解しており、飛信隊の隊員にも青臭いとバカにされ、いろいろ我慢させてしまっているのもわかっている。しかし、そこは譲れなく、子供の頃に描いた誰よりも強くてカッコいい天下の大将軍に本気でなりたいと思っており、飛信隊もそういう隊でありたいと思ってると力強く語る。
天幕の外で信の話を聞いていた隊員達はその言葉を聞き、涙した。

信は尾平におれのわがままに付き合わせて悪いなと言うと尾平は一つも悪くないと叫ぶ。みんな好きで信のわがままに付き合っていて、全部承知の上で信と一緒に戦いたいと思っているんだ。それに実際我慢なんてことはない、桓騎軍と飛信隊は決定的に違っており、飛信隊は信と一緒に戦っているから、心が潤っているから略奪も陵辱も必要ないと豪語する。そして、尾平はもう一度飛信隊に入れてくれと懇請する。信は当たり前だ、一番賑やかな尾平がいないと隊が始まらないと返す。

黒羊五日目は中央丘を占拠し、砦化を進める趙軍に対して、秦軍は内輪揉めで半日を費やしたのであった。
だが驚くべきことにこの五日目の残り半日で黒羊戦は終結を迎えるのである。





信の子供の頃の夢の大将軍になりたいという気持ちとそれを支えようとする飛信隊は一層結束は固くなり、また一段と強い隊になるでしょう。
心を揺り動かされた良い回だったと思います。尾平も戻ってきたし。

しかし、ここから桓騎はどんな手を打ってくるのか。砂鬼一家がいたこと、桓騎兵がゲロを吐いていたことから、あの大きな輪のような物体はきっと人体を使った何かなんでしょうね。
少なくとも紀彗が砦化した丘を放棄して、降りてこざるを得ない状況をどう作り出すのか気になりますね…

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